シャイアンのぶん殴っても内定でないよブログ その1 By Y平

プルルルルルルルルルルル。
「まもなく三番線から電車が発車します。黄色い線までお下がりください。」
ピーヒロヒィ!
どこか間抜けな笛が駅のホームに鳴り響く。
俺は、扉まで全速力で走りきると、満員の西部線に強引にでかい体を押し沈めた。
前のOLにギュウと体を押し付け、扉に挟まれないようにがんばる。
ぶしゅう。
どこからともなく空気の抜けたような音が鳴り、扉が体すれすれを滑り閉じていく。
バタン。
扉が閉められると、途端に満員電車特有のニオイ――人間の脂や汗のニオイ、
香水やら呼吸のニオイやら――がジンワリと鼻孔に侵入してくる。
車内は生暖かい空気が充満しており、不快。左のオヤジのハゲ頭には、
無数の汗の粒がプツプツと浮き出ているのが分かる。そしてもちろん、
俺の顔もまた汗で湿っており、就活用に短く刈り込んだもみ上げに汗が
たらりと滑っていくのが感じられる。
息が苦しい。ちくしょう、走るんじゃなかった。急ぐ用などどこにもないはずなのに。
今日はとある二流企業の一次面接であった。
出来杉を脅して書かせたエントリーシート(当然俺の)が奇跡的に通り、
就活始めて以来通算二回目の面接があったのだ。
就活が始まった当初は、俺様のエントリーシートを通さないなんて何事、
そんな企業こっちから願い下げだっつーの! などと息巻いていた俺だったが、
そのときから俺は自分の力不足に気づいていた。企業から見たら、論理的思考もできない、
おまけに自分の意見をこぶし以外で伝えるすべを知らない俺などに、
魅力を感じようだなんて思うまい。それは俺も気づいていた。
案の定、俺は面接官の最初の質問、
「なぜわが社を志望したのですか?」というベーシックな質問に、答えることができなかった。
どもるばかりで、ついて出てくる言葉は断片的。
うまく答えねばと焦れば焦るほど、無造作な言葉が勝手に口から溢れ、
テーマを盛り上げることなく萎んでいく。
終いには「もうけっこうです。ありがとうございました」などと、
機械的笑みを浮かべた面接官に半ば強引に打ち切られてしまった。
作り笑いがひどくむかついた……はずだったが、不思議と怒りの感情は沸き起こらない。
ただただ俺は沈んでいったのだった。
その帰り道がこの満員電車だ。人がギュウギュウにつめられた車内で、俺は微動だにできない。
前のOLと左右のサラリーマンにつめられ、足場が爪先立ちするしかないほど狭まっている。
ムンムンとした空気に湿らされた窓に背中が押し付けられてイヤだ。
おまけに俺の鼻の先5センチには前のOLの頭がある。
セミロングの髪は黒々と輝いていて、艶やかだったが、
俺はその髪を鼻に吸い込んでしまうような気がして、若干呼吸を弱める。
それが余計に苦しくて、汗はとめどなく溢れてきて、段々イライラした気分になっていく。
就活のイライラも手伝って、鋭い目でその女のつむじを見ていると、
女はフッと首を動かして、こちらを横目で見た。
鼻息が髪にあたるだとか、理不尽な文句をつけられそうな気がして、
俺はすばやく目線を中つり広告に移す。
こういう小さい自分がイヤだったが、そんな感情はすぐに打ち消された。
「タケシさん?」
顔のすぐ下から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
目線を下げると、俺の胸の辺りにピットリとくっついたシスカちゃんの顔があった。
ずっとOLと思っていたのだが、なるほど。よく見ると、
シスカちゃんはリクルートスーツを着ているようだ。
「シスカちゃんか」
同級生のシスカちゃんがいた。小学生の頃よりだいぶ大人びていたが、
大きな目と形のいいマツゲ、
小さな鼻に、モチモチした肌は、俺の頭に瞬時にシスカちゃんを連想させた。
昔のクラスのアイドルに会い、俺の心は踊りに踊った。
が、すぐに「まいったな」とも思ってしまうのである。
「久しぶり? 元気そうね。」
俺は、ああとか、おうとか。生返事を返しながら、気分が滅入っていくのが分かる。
そもそも小学生の頃から、シスカちゃんとは喋っていそうであまり喋っていない。
シスカちゃんと話すとき、たいていツネオやノベタが一緒であることが多かったのだが、
今考えると二人きりで喋ったことなど一度もない。
シスカちゃんに憧れる気持ちを持つ一方で、なんとなく可愛い女子と一緒になることが怖かった。
ツネオやノベタなら俺が好き勝手喋っていればよかった。
奴らは俺に対して文句があっても何も言わないし、ガタガタ抜かせばぶん殴ってしまえばいい。
しかしシスカちゃんはそうはいかない。シスカちゃんに気を使わせることなど、
いくら傲慢な俺とて穏やかではないのだ。
一度ノベタたちと白亜紀の恐竜時代に大旅行をしたことがあったが、
そのときも俺はツネオの側にずっとおり、なるべくシスカちゃんと二人になることは避けた。
そんなわけで、俺がそういう態度を取っているのを暗黙のうちにシスカちゃんは気づいていた。
なので今日までシスカちゃんは俺とは極力話さないように勤めていると思ってきたのだが、
目の前のシスカちゃんは……何か様子がおかしい。
「今、卒業研究と就活がかぶっててね、たーいへんなの。
バイトもしなくちゃなんないし……あ、バイトはウェイトレスやってるんだけどね。
そこのお客さんがなんか、ふふ……言っちゃだめだけどタチが悪くって。
対応に困っちゃうのよね。でもそういう対応するのって実はタメになっちゃってて。
やっぱり赤の他人といきなりコミュニケーションとるのって大切で――」
よく喋る。かつてシスカちゃんは俺にこんなに喋っていただろうか。
その場を取り繕うために無理に会話を搾り出す。
俺の知っているシスカちゃんはそんなことをやるような女ではなかった。
シスカちゃんの会話はいつも何らかの重みがあり、優しさがあり、そして媚びがなかった。
なのにこのシスカちゃんは、何か女子大生の枠に収まった、
いや、就活生らしいイキイキした口調であった。
快活で明朗だったが、シスカちゃんらしさは大分失われてしまったように思われる。
「今日は最終面接だったのよ。タケシさんは、就活、どう?」
出ると思った。猫も杓子も就活就活。それ以外に会話はないってのか。
シスカちゃんまでもが、就活生という枠に捕えられてしまったようで、
俺はひどく不快になった。なぜ不快になったのだろう?
その理由は、自分もそうなるべきであることが分かっているからであった。
ハキハキと、明確に、魅力的に、細かに、簡潔に自分を伝える。
それが今の俺には明らかに不足していたし、何より必要であった。
今のちょっとした会話でシスカちゃんはそれをできるだろうことが分かった。
羨ましい気持ちより、腹だたしい気持ちが勝ってしまいそうになる。
「まあ、ぼちぼちよ」
そして俺はシスカちゃんを見極めるために、さぐるように次の言葉を繰り出したのだ。
「最終面接ってすごいね。さすがシスカちゃん」
シスカちゃんは、待ってましたとばかりに顔を輝かせた。
ギュウギュウの車内の中で、シスカちゃんだけがイキイキとしている。
「第一志望じゃないんだけどね。でも練習のつもりで……っていっても結構ちゃんとした企業なんだけど……」
聞いてないテーマまでも率先して進めていく。
ここからは自分の武勇伝に移るのだろう。どいつもこいつもおんなじよ。
「OG訪問した企業だったのね。んで、よさそうな社風だったから、
何事も経験だし受けてみようかなって。」
「OG訪問だって? すごいなあシスカちゃんは。」
「すごくないわよぉ。私の場合自己分析をちゃんとして早くから自分の方向性が見えたから……
やっぱり行きたい方面の企業だと、第一志望じゃなくても本気になれるわよね。」
「自己分析かあ……あはは。俺、全然やってないや」
精一杯おどけてこの言葉を吐き出してみる。途端にシスカちゃんの顔が曇る。
まあ分かっていたことだけど。
「こんなこと言うとあれだけど……タケシさん、ちゃんと自己分析はしたほうがいいわよ。
自己啓発になるし、自分に向いている分野、向いてない分野をはっきりしたほうが、就活に絶対便利だから。」
俺は予想通りの言葉をシスカちゃんが言うのを、怒りを抑えながら聞いていた。
そしてまたおどけてこう言った。
「でも今更……俺……自己分析なんてやったって、しゃーないよ。」
「それがいけないの。たとえ就活につながらなくたって、
何かの役に立つから。それにまだ秋採用の時期じゃない。
がんばればきっと。でも頑張るといっても闇雲に頑張っても意味ないの、例えば……」
それからシスカちゃんは俺が電車を降りるまで、どこかで聞いたような就活話を長々とした。
シスカちゃんの話し方は、数々の面接をくぐってきたプロの話し方で、
それは自信と……なにより自己陶酔で満ちた話し方であった。
一種の就活ナルチシズム。私、しっかりしてるでしょ? えらいでしょ?
というセリフが聞こえてきそうな物言いが腹だたしい。
たとえそのアドバイスが100%正しくても、俺には許せなかった。
むしろシスカちゃんの非のなさが腹立たしかったのだ。
俺が電車を降りるとき、シスカちゃんは言った。
「力をおとさないで。がんばればきっといつかなんとかなるのよ。」
一度も俺が就活で苦戦したなんて言ってないのだが、
会話の流れでそういうことになってしまったようだ。
あっているのが余計に……俺の胸をかきむしった。同情するな。そんなことは分かってる。
俺はズボンのポケットから定期入れを荒々しく引っつかむと、
人がパラパラと出入りするプラットホームを早足で歩いていく。
後ろから、くたびれたスーツを着たサラリーマンが、背中を丸めながら無表情で通り過ぎる。
空を見上げると、灰色の雲が重く俺にのしかかってくるような気がした。
プラットホームの外灯がそこだけ妙にボウッと光っていて、
それ以外のところでは既に闇が侵入しつつある。
風が寒くなってきた。定期券を自動改札機に入れ損ね時間を食う。
後ろの人が舌打ちしたような気がした。
俺は駅を出ると、正面の狭い道に広がる商店街の光を眺める。
左右のゴチャゴチャ光る建物のあちこちから看板が顔を出しているのが見える。
車の通る音をベースに、人の話し声や、店のBGMが主旋律を奏で、
商店街そのものが音楽のようである。
さっきのサラリーマンはもうどこにもいない。
数分前にはシスカちゃんと話していた自分は今ひとりぼっちだ。
人がたくさんいる。多人数で笑っている人もいれば、
無表情に一人、下を向きながら歩を進める人もいる。
(俺は果たして就職したいのだろうか……)
そんなことを一人ボウッと考えていると、俺の前に、左ハンドルのオープンカーがゆっくりと停止した。
そこには見慣れた顔が生えているような気がした。
「シャイアンじゃない?」
俺は声に反応して、その見慣れた顔を凝視する。
~その2に続く~
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出木杉 ≠ 出来過

コンプレックスとお友達になろう By Y平

「俺って亀梨じゃね……?」
僕は鏡に映った自分を見て、そう言うや否や、やおら射精をした。
こんなカッコいい自分の遺伝子はなんとしても後世に伝えねばという本能が、
ちんこを絶頂へと導いたのか。あるいは、自分のあまりの美少年っぷりに
性的な意味で絶頂を迎えてしまったのか。ちんこのみぞ知るといった感じである。
まあ、こんなナルシストイベンツは全くの僕の妄想でして、実際の僕は
ヒゲに天パ、ガリで中背という、もてないロード爆走中の童貞マシンであります。
こんなブサイク顔を見て、リストカットすることはあってもチンコが立つなんて絶対ない。
卒業アルバムを見ながら、
「こいつじゃ抜けねえなあー」
なんてフカしてる僕ですが、一番抜けない顔なのは鈴丘さんではなく自分自身ということに今気づきました。
なんで俺はこんな顔なんだ。きめえ。
亀梨はいいよな。俺、亀梨だったらほんと人生幸せだよ。
あいつだったら、全国津々浦々の可愛いジャニオタはもちろん、
女子のアナとかそういう高島、あるいは戸部的な女の子とも合コンし放題。酒に酔った亀平は
「ぶっちゃけNEWS沈んで得したの俺でーすwwww」
とかハイクオリティなギャグをぶちかまして周り爆笑。
中野とかは既にメロメロ、でも本当に俺が選ぶのは石本沙織っていうオチさ。
「ええ!? 石本!? しぶいよその人選!
もっとこう、中野とか、平井とかいっぱいいるじゃないすかー。
さすがっすね、亀平さん。ぐひひひひ。」
と横からチャチャ入れるのは、軽部真一だ。俺はすかさず軽部の腹に重いブローを入れる。
ズン!
崩れる軽部、それを追ってメガネがカシャリと地面に落ち、乾いた音を立てる。
「うっ! ……ちょっと、何するんすか……亀平さん」
俺は亀梨のかっこいい顔のまま、冷酷な笑みを浮かべ軽部を見下す。
「お前みたいのを、個性がないって言うんだよ」
崩れる軽部真一。ち、ほんとにゴミだなこいつぁ……
軽部死亡ニュースを報道する間もなく、アナウンサールームは揺れる三角、四角関係。
愛欲のカオスを迎える。
「ニュースなんて読んでられない!」
愛犬が死んだという理由で仕事を休む、旧時代のアイドル●松田聖子よろしく
サボタージュするのは高島彩。名言であります。安部総理の「中国ファック!」という流行語を押しのけて、
その年の流行語大将に選ばれたのはその後の話でした。
さて、残る目覚ましテレビは大塚の一人きり。大塚は語る。
「あいつらいなくていいや。看板番組、ゲットだぜ!」
と。関係ないけどポケモンはこの前最終回でした。
ぶっちゃけこんぐらい亀梨な僕だったら、自分の顔で3回抜けるなー。
もう自分大好き。自分とホモりたい。自分と結婚できたらいいのに。
しかし現実は悲しく俺の希望を打ち砕く。鏡に映った自分の姿を見やると、
そこにはアンガールズの佐藤江梨子と付き合ってないほうの顔よりキモイ男が映っている。
ガッテム、ジーザス。俺よりかっこいいやつ全部死ねばいいのに。
亀梨も小池も山根もみんな死ね。ミンシネ。
そんなこと言ってもまあ大抵みんな死なないので、僕はすっくと立ち上がると、
「じゃあ僕が死ぬわ」と言いながら非常にフランクな態度で小刀を頚動脈にあてがうのです。
そして死ぬ前に最後、鏡を見るのだ。
うーん、ほぼ亀梨なんだけど、絶妙にアンガ田中以下に落ちるのはどうしてか?
切腹を受け入れたもののふのように、穏やかな頭で考えます。そこで閃きました。
ス ト パ ー か け れ ば い ん じ ゃ ね ?
グラシァスありがとう、天才な自分自身にありがとう。ストパーかければいいんだ。
なんて簡単な命題なんざましょう? ストパーさえかければ
僕もキモオタから一転、ジャニる(ジャニーズるの略語)ことが可能なのです。
抜け穴をつくとはまさにこのこと。旧ライブドアもびっくりの戦略でありました。
そうよ、なんたってこの前髪の天パがきめえ。調子いいときでさえ
「し」の字に、湿気バリバリの日にゃ「し」どころか「ん」の字にくねる俺の前髪。
これじゃあ今まで素人童貞なのもうなづけらあな。
よく、ストレートの髪を所有している人が、
「天パっていいじゃんw 俺なんか全然パーマとかかかんなくて腹立つもん」
なんて言ったりしますが、あれは嫌味。僕ら天パ族にとって嫌味以外のなにものでもない。
そればかりか僕がボンバーヘッドな頭で歩いていると、たまに
「その髪パーマ? かなりいいよ!」
なんて褒めてくる人もいますが、アスホール! 糞どもめ!
こいつらの言動は実際はこう↓
「その髪パーマ? かなりいいよ! (ネタとして)」
そういう括弧書きが必ず存在する! そして僕がグダグダ愚痴をこぼすと、
「天パがいかせる髪形を考えろよ」
などとまるで僕が悪いみたいな言い方をする。うっせーよ!
てめえ前髪が「ん」の字にちぢれてから言ってみろや! 言うは易しだグルアァァ!
しかーし、ここが江戸時代であれば涙を呑んで剃髪するしかなかった僕ですが、
都合のいいことにここは平成安部内閣。ストレートパーマの材料なんて、
世の中のビニールゴミぐらいあまりに余っています。
そこで、早速やってみました。美容院でやるほどお金もないので、
悪いとは分かってますが、800円の市販のやつでストパってみました。
相当いたんだ

かかりませんでした。(そして痛みました)
誰か天パと仲良くなるコツを教えてください。おねがいします。
残された道は佐藤隆太くらいしか思いつきません。
(頚動脈付近をいたずらに傷つけながら懇願)
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ぶっちゃけ天パでもストレートでもどっちでもいい。