禁煙と今年の初滑り

 滑ったと言っても楽しくスノボでとかじゃない。普通に道で滑った。妻の静止を振り切り、禁煙をやぶって外にタバコ吸いに行ったら凍った道がドン! おうおうおうとヨチヨチ歩きしてたら滑った。転んだ。尾骨打った。めちゃめちゃ痛いよ。アナ雪で言えば、アナが滑って転んで「凍っちゃう凍っちゃう凍っちゃう」っていうシーン。アレの感じで滑った。現実は「凍っちゃう凍っちゃう凍っちゃう」なんて可愛いもんじゃなく、ついて出てくる言葉は「いってえ……くそ……!」と30手前のオッサンの呪詛。
 札幌に住んでいると「今年は何回滑って転んだか?」みたいな話が良く出る。今年1回目ー。とか今年は何回も転んでるとか。まだ転んでない人はドヤ顔。5月の雪が溶けきるまでに一回も転ばなければ勝ちの恒例のゲーム。どうでもいいと皆思ってるはずなのに必ずこの会話、みんな、やる。
 しかし我々中年ではなく子供であればどうだろうか。おそらくそんなことは話題にしないと思われる。子供は氷の上で転んでもなんともない。アナもエルサもたぶん「今年何回転んだか?」なんて気にしない。アナが「さっき転んじゃってさー。今年の初滑りよ」なんて口にしようものならこれはブルシットな脚本だってウォルト方面からケチがつくでしょう。
 思うにこれは老いから来る会話だと断定する。20代後半から60代のおじいちゃんまで。こぞって「今年何回転んだか」選手権が行われるのは、体が思うように動かなくなり、氷に翻弄される自己を誰かに知って欲しい。気持ちを分かって欲しいという顕れ。その心が「今年、x回転んだ」との会話をさせるのだと思う。
 そう思うと可愛いものだ。ゆりかごから墓場までとは良く言うものだが、人間誰しも赤ん坊の頃は立つだけで褒められ、そしてまた老人になれば歩くだけで若いですねと褒められる。朝は4本、昼は2本、夜は3本なーんだ? ってなもん。その中間点としてこの「今年x回転んだ」という謎の会話が行われる。思うように動かなくなってきた体、そしてアナも引くぐらいのツルツルの札幌の路面、そして今年初滑り。尾骨打った。目から星が出た。いってえ。凍っちゃう凍っちゃうじゃ済まねえぞアナの馬鹿野郎。いってえ。
 タバコ吸い吸い、尻をさすりながらアナテイストでよちよち家に戻ると、エルサではなく妻が「タバコ吸った天罰だわ」と一言。それはないよエルサ姉さん。

すすめる母さん

 去年末の話。妻と弟と僕で飯を食べている。そこへ「今年は牡蠣を買ったのよ」だなんてノリノリの母がやってきた。
母「普通に焼いた牡蠣と、焼いてチーズ載っけた牡蠣とどっちがいい?」
弟「チーズぅ?」
Y「僕ちょっとだけチーズのやつ欲しい」
妻「おいしそうですね」
母「でしょ? あんたも欲しいでしょ? チーズ」
弟「うーん、じゃあ半々にして」
 「半々ね!」と答え、満足そうにキッチンに消える母。そしてじゅうじゅう音がしばらく。実家のネコの話などをしていると皿を持った母がやってきた。
母「はーい。できたよ! 美味しいよ。食べてね。チーズだよ!」
 母が「ドン!」と置いた皿を見ると、そこにはチーズの載った牡蠣と、プレーンの牡蠣が、いや違う。
妻「わあ、全部に……」
Y「チーズが……」
 絶句する僕と妻に弟が、「な? 毎日大変だろ?」と一言。
 チーズのせ牡蠣は非常に美味しかった。美味しかったけどね。すごいよね。

少しも寒くないわって強がり

 年末から正月にかけてアナと雪の女王の特集を目にする。我々夫婦はまだアナ雪を観ていないし今後も見る予定が無いため好き勝手色々予想する。
妻「アナ雪ってさ、今まで観た情報を統合すると」
Y「うん」
妻「引きこもりの姉をどうにか外に引き出そうって話なのかな」

たばこ夫

 あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いしますと同時に悲しいお話を。
 最近タバコの吸い過ぎで口臭の気になる僕。友人と妻の前での僕の匂いに関する談義。
Y「最近俺の口、生ゴミみたいな匂いするよね」
妻「いや、生ゴミのほうがいいにおいだわ」
Y「いや、まじでそんなに? もしかして付き合ってる頃からそうだった?」
妻「付き合ってた頃はこんなんじゃなかったよ。積み重ねで最近だよ」
友人「結婚してから生ゴミになったって。こんなはずじゃなかった的な」
Y「詐欺だな……」
 タバコ。マジで。辞めようと。思った。