5月12日 ダツモウプレイ

 昨夜は0時に就寝。したのだが眠りの質が悪かったのか目覚めたのが昼の12時。気分は最悪。外を見ると曇り空。ははあ、この病は天気にも影響されるのだなと一人ごちてノソノソと床から這い降りる。
 起き抜けにカレーをいっぱい喰らいながらレンタルしてきた「超高速参勤交代」を見る。参勤交代をモチイフにしたコメディーだ。佐々木蔵之介に西村雅彦、六角精児が出てるってんでさぞこれは面白いコメディーになってるだろうと思いきやまずまずの出来。なんかテンポ悪かった。超高速のはずなのに。全体的に画面が暗く、誰が何やってんだか分かりゃしない。ラストシーンの気の抜けたところで画面がぱっと明るくなったところを見ると、画面を暗くしていたのはリアリティーを出すための演出だったと分かったが、コメディーならコメディーらしく見やすくしてもらいたかった。
 言うは易し。偉そうに演出やら脚本にいちゃもんつけますが、じゃあおめえ書いてみろと言われるとできやしねえ。これがネット民のネット弁慶たる所以。匿名で叩きたいだけ叩くのはスカッとしますが虚しい。こういうネット弁慶の恥を抑えて感想を一言いうなれば、僕が書けないぐらいの面白さはあったというぐらいか。ご苦労様です。
 悪いの喰らっちまったよなんて沈んだ顔で街に出る。目的はヒゲ脱毛である。はあ、行きたくねえ。生きたくねえと思うほどの行きたくなさ。ははあ、今朝方気分が悪かったのはこれ(脱毛)のせいだなと合点が行く。
 なにがやだってマジで痛い。レーザーでもって皮下の毛根を焼き切るなんて考えたヤツは拷問器具かなんかをやらせたら一流に違いない。バチン! バチン! つむった目の奥でレーザーが光る。麻酔クリームなんて効きゃしねえ。いや逆に。効いてこの痛さだからマジでこれを考えたヤツのサディスト性といったらたまらない。
 ごちゃごちゃ考えながら診察台に寝そべる。施術者はおなじみのかつみさゆりのさゆり似のねーちゃん。可愛い。「んーとぉ、この前しゅごく痛がってましたからぁ、ジュールを少し下げようと思うんでしゅけどぉ。22から24でどれがいいでしゅぅ」って舌っ足らずに喋る姿は幼モノのAVに出れるレベル。可愛いなあなどと思いつつ、一つ今日はこのさゆり似のチャンネーに強いレーザーを当てられてよがるプレイだと思い込む事とする。24、24でお願いします。「わあ、だいじょぶですかぁ? 痛かったら、遠慮せじゅにいってくだしゃいねぇ」と返ってくる。語尾に「キャピ☆」とかついても怒らないレベルの可愛さ。しかもナース姿。いいねえ、コスプレかい? 本寸法だねえ。
 イケる。今日は逝ける。この拷問器具もさゆりがやってくれるのであればそれは性玩具になる。はあ、勃起したらどうしよう。むしろ本当に逝ったら? ワクワクしながら施術が始まった。バチン! 「ひゃあ!」
 結果から言うとジュールをあげすぎて顔の下側が見事に腫れ上がったおっさんが出来上がった。下膨れのヒゲ面のおっさんとナース服のさゆり。なるほど幼モノのAVのパッケージとしては見事なものである。痛む下あごを押さえながらスゴスゴと、男優は退場。施術室には「やりしゅぎちゃったぁ」などと呟きながら困った顔をするさゆりが残る。なるほどなるほど。なにをやりすぎちゃったのかなあ?(スケベ面で) これは上物のM系ロリAVの一場面としては上策。よきかなよきかな。ばかたれ。いてえよ。

ナレーター「プロメンヘラの朝は早い」


 北海道札幌市。閑静な住宅街の一画。ここに一軒のアパートがある。プロメンヘラの仕事場である。
 社畜大国日本。精神疾患により医療機関に罹っている患者数は増加の一途をたどり、平成23年には精神患者の数は320万人にも達している。その中で有数のプロメンヘラとして名を馳せる男がここにいた。我々は、プロメンヘラの一日を追った。
 プロメンヘラの朝は早い。時刻は朝6時。飼っているウサギがガタガタとケージをかじる音が聴こえてくる。寝室からのそのそ出てきたのはプロメンヘラだ。
——朝、早いですね?
「ええ。まあでも目が覚めちゃうんですよね。こんな仕事をしているとね」
 さりげなく不眠を訴える言葉遣いにプロの技が光る。
「それにウサギの世話もしなきゃならないし。最近はこいつだけが友達です」
 そう言っておもむろにウサギのケージを開け、トイレの糞尿などを拭いていると唐突にウサギにかじられるプロメンヘラ。
「ウサギも分かるんですかね? このクズ人間がって」
 笑うプロメンヘラの顔には一切の自虐は浮かんでいない。ズシリとただただ沈んでいる。ここにもプロならではの表情があった。
 冷蔵庫を開けるプロ。取り出したのは卵と牛乳。プロは生卵に醤油と一味をかけるとそのまま一飲みする。牛乳にはプロテインが混ぜ込んである。
「ロッキーで、5つ、いや6つかな。生卵を飲むシーンあるでしょ。あれ、あこがれてましてね。プロテインと牛乳も飲む事で筋肉増進を図ってます」
——体、鍛えてるんですか?
「ええ、やることもないので」
 仕事へ向かう妻を見送り、金魚にエサをあげると、プロはおもむろにリビングに掃除機をかけ始めた。
「綺麗にしとかないと、嫁がやっぱいい気はしてくれないんですよ。プロがいても正常な家庭生活を保たねばならないっていうジレンマがありますから」
 掃除が終わると寝間着のジャージのまま外へ出かける。
——これからお仕事ですか?
「ジムですよ。この生活、体が資本ですからね。何もしないでボケっとしているのは時間がもったいないです。それに」
「世間様に申し訳がなくって。僕なりのエクスキューズです。何かやってるぞって。ただ……」
「プロならエクスキューズ探しなんかしないんだろうなって。プロは存分にダラダラできると思います。ここが」
「プロとアマとの境目なんでしょうね」
 プロの顔が曇る。
 ジムで汗を流し帰ってきたプロメンヘラはすぐさまユニクロ一色の服装に着替え始めた。
——これから仕事ですか?
「いえ、通院です。精神科にあと一ヶ月休養が必要ですっていう診断書を書いてもらうんですよ」
 プロメンヘラが運転する車内。車内には落語が流れていた。
——診断書って言いますが、そんなに簡単に出してもらえるものなんですか?
「ええ、正直言ってザルです。向こうも商売ですしね。簡単なアンケートと口頭答弁だけで診断がくだります。答弁では演技力が必要ですね。いかにも陰鬱な表情を見せるのがコツです。というか最終的に向こうが『どうする?』と聞いてくるものですから」
——どう返すんですか?
「『休みます』と答えるだけでOKです」
 そう笑うプロメンヘラの横顔には、休職で迷惑をかける様々な人に対する申し訳なさ、そういったものはみじんも浮かんでいなかった。ここにもプロならではのメンタルの強さがある。
「最初はね、あー申し訳ないなー。とか思ってたんですがね。ただ、長くなると、ね。それを当然のモノとして受け取らないとこっちも気が保たないんですよ」
——そんな自分をどう思われますか?
「ええ、クズですね(笑)」
 そう言って診察室に消えて行くプロの背中は丸まり、いかにも不健康そうであった。こうしたちょっとした移動にもプロは一時も気を抜かない。気を抜かず不健康のマントをかぶる。
 30分後。
 診断を終えたプロメンヘラが戻ってきた。浮かない顔である。
——診断書はもらえましたか?
「……」
 プロメンヘラはカメラを手で塞ぎ、撮るなとの意志を示してくる。不機嫌な顔。急いで乗り込んだ車内には楽太郎の声が響いている。
「俺、楽太郎きらいなんすよね」
 自宅に戻ってきたプロメンヘラは薬を飲む。テレビにはジャッキーチェンの「酔拳」がながれている。レンタルDVDだ。その間に昨日の晩飯の皿を洗うプロ。目線の先はテレビから離さない。プロらしからぬ平行作業だ。クルー達の間に困惑の空気が漂う。
——病院はどうでしたか?
「……説教、くらいましたよ。あんた、そらいくら休んだって変わらないよって」
 皿洗いを終えた後、またいつもの寝間着のジャージに着替えて再び外へ出るプロ。ここでもプロらしからぬ行動力である。いったいどうしてしまったというのか。
——どこに行くんですか?
「温泉」
 そのままクルーを残して独り温泉へと向かうプロ。我々クルーも別のロケ車で後を追う。プロはそのまま姿を消した。
 我々がようやく探し出した温泉の休憩室にプロはいた。浮かない顔でカレーを食べ、コーヒー牛乳を飲んでいた。
——病院の診断はどうだったんですか?
 プロはようやく重い口を開く。
「それだけ外出したりモノを書いたりできるんであれば正常ですよと……言われちゃいました」
「いわゆる戦力外通告でしたね。あぜんとしましたよ。僕はただ診断書をもらいたかっただけなんです。それがこのざまですよ。それに、この長かった選手生命が終わっちゃうと思うと」
 プロは一瞬だけプロらしい沈んだ顔をのぞかせた。
「くやしくてね」
 現在。鬱病を模して診断書をもらい、働かずに会社から給料をもらういわゆるプロメンヘラが社会には横行している。今回われわれが取材したプロもその一人だが、彼の選手生命は絶たれようとしていた。しかし彼はできうる限りプロを続けると我々に話す。今後も彼のプロ生活は続く。彼は別れしなにこう呟いた。
「次は社内ニートを狙うしか……」
 彼のプロとしての生活は更なるステップへすすもうとしていた。

5月10日 僕が楽太郎を嫌いなワケ

 昨夜は0時に就寝。起きたのが8時。
 もうね。ギブ。昨日の野球のダメージが激しすぎる。筋肉痛がひどすぎて起き上がれなかった。毎日野球するヤツとか怪物過ぎるだろ。覚醒して体は起きたいのに、起きれない。そのまま落語「時そば」を聴きつつウダウダした。
 12時に重い腰をあげる。ビキビキ。だめ。体を捻ると激痛が走り思わず膝から崩れそうになる。30歳でこれなら40だったら死ぬんじゃない? 野球の練習の後日、40代のおっさんが突然死。死因は筋肉痛。ありえるよ。この痛みならありえるよ。
 腹が減った。筋肉痛が痛いと言えど食わなければ本格的に死ぬ。インスタントの塩焼きソバを作りながらまたまた落語タイム。「初天神」を聴く。昔の楽太郎のやってたやつだった。楽太郎いけすかない。なんで僕、こんなに楽太郎のこと嫌ってるんだろうと思って深い昔の記憶を掘り起こしたところ心当たりあった。
 昔、円楽が楽太郎だった時代。僕が高校生の時。楽太郎がうちの高校に落語しにきたことがあった。教養深い我が校の生徒を小粋な落語で更に教養深くせしめんという試み。まあ僕はその時分、世界史で8点とか取ってたけど。教養から一番遠い落伍生徒であったけど(落語だけに)。
 んでまあ、楽太郎と楽太郎のお弟子さんみたいなのが来た。高校の体育館の壇上に高座をもうけ、まずはお弟子さんからひと話ぶったわけですが、これが面白くないのなんのって。盛大に滑ってた。完全に場が凍り付いてた。
 お弟子さんはオチらしきものを言った後、お義理みたいなパラパラとした拍手を背にすごすご退散して行った。完全に場がしらけたまま、いよいよ真打ちの楽太郎が登壇した。さあ落語するのかと思いきや、まずは枕。何の話をするかというと完全に自慢話をしていた。「自分なんかね、元がいいのか、勉強せずに青山学院大学に入ったんですよ」とかなんとか。ああ、なるほど今にして思えば、進学校だった我々生徒に対する楽太郎の精一杯のおどけ。いつも歌丸に皮肉を言うのと同様に我々に皮肉めいた笑いを。
 とはいえ、そこは高校生。自慢話を自慢話としてしか受け取れない。場は完全にしらけた。早くおわんねーかな的な。でもその自慢話が枕でこれからそれに因んだ気の効いた落語が始まるんだろうと、一部の落語好きは思っていたに違いない。だが楽太郎。自慢話をするだけして終わった。まさかの枕だけ。落語しない。落語家呼んだのに落語しないとは何事か。
 つまらねえもの聴いちゃったよなんて沈んだ気持ちで教室に戻る。しばらくすると数学担当の学年主任が来た。学年主任は数学を始める前によっぽど腹が立ったのか、「さっきの楽太郎はひどかったなー」などと、一通り楽太郎に関する悪口を言った後、「一番言いたいのはさ、落語をしろって話なんだよ!」と叫んだ。俺は心の中で頷き、その日から楽太郎を目の敵にし始めたわけである。

5月9日 今シーズン初野球

 昨夜は志ん朝の『そば清』を聴きながら寝た。落語、おもしれえ。最近は練習のため落語を聴きながらセリフを繰り返すようなことをやっているんだが、聴くとやるとでは大違い。噺家はすごい。滑舌、表情、話の間、全てレベルが段違い。特に滑舌がやばい。あんなに速く喋れない。これは訓練次第でどうとでもなるはず。あめんぼあかいなあいうえおを繰り返す。あめんぼあかいなあいうえお、かきのきくりのきかきくけこ。
 朝は気分よし。野球の初練習に向かう。今日は寒いとの予報が出ていたが日和がよく体感的には暖かかった。絶好の野球日和。
 初野球。野球のために昨年の冬から必死に筋トレしてきた。その効果は出たか、否か。
 メニューは内野ノック、外野ノック、フリー、ロングティー。仕上がりとしては打撃は20%、守備は50%、ピッチング50%と言った感じか。まあ始まったばかりで仕上がりもクソもないが。
 そういえばピッチングが例年より良くなってた。球速は今時期なので出てないが、スライダーのコントロールとキレが上がってた。外角低めにバカンバカン決まった。たぶん一球も投げ損なってない。ふむ。これは筋トレの成果か。背筋トレーニングと、フットプレスあたりが僕のスライダーを良くした感。今年ピッチャー俺、あるで。
 野球から帰った後は死んでいた。体中、特に背中が痛い。ラーメンとおにぎりを食った後ずっと昼寝した。名探偵コナンの夢を観ていた。起きたら頭上のテレビで本当にコナンのアニメがやっていた。どこからが夢でどこからが現実なのか。小五郎のおっちゃんもこんな気分?