大晦日へべれけコンビニ By Y平

 去年の暮れから、毎日コンビニでバイトしてるので年が明けた気がしない。果たして年越しめいたイベント、もしくは慣習が僕の周りにチラッとでも顔を見せただろうか? 行く年来る年? 紅白? 除夜の鐘? 初詣? おみくじで大吉出た、わぁい? 全ては僕と関係ない次元の空間の物語り。
 まあいいのです。正直今年は暇すぎた。人が休んでるときに働けとはよく偉人が言ってそうな言葉なんすけども、僕は人が働いているときに休んでた。皆がせこせこと頑張っているときに、一人、「週休5日とかマジ天国なんすけど!」とふんぞり返っていた。これでね、「人が休んでるときに、また休んだ」とか僕がバカ口開けて言ったら、社会ってやつあ、多大なる僕びいきしてるってことになりますな。そんなこたあ、社会さん、逆に僕のほうからお断りっすわ。マジ、なめないでいただきたい。年末年始、休みなくバイトとか上等っす。「人が休んでるときに働く」だよ! なあ? それが輝かしい生き方! 輝かしい精神!
 しかしもう少し、多角的な見方をして、果たして週休5日は本当に休息になっていたか考える。僕は本当に平穏に休んでいた……か? ドロドロとした理想の自分との葛藤、将来への圧倒的不安、できるものに対する羨望と嫉妬。これらを抱え込んで休んでいた僕が、真の意味での休息をとっていたかと言うと、疑問なのであります。むしろ限りなく休まってない。精神的な意味では。
 すると導き出される結論としては、休まっていないっつーことは働いてるってこった。僕は一年中働いていたのダッタ! 証明完了! 声を大にして「ムカつく!」「なんで俺だけ!?」とどこかに向かって叫ぶ。
 ということで、ムカついたので去年の30日に生ラジオをやりながら一人で飲みまくってた。したら酷いことになった。いえ、ラジオが酷いのはよいのです。次の日のバイトがひどかった。
 というのも実は、ラジオが終わったのが31日の朝6時。イコール、飲みが終了したのが朝6時。なんだけども、気づけば31日のバイトが朝9時からあるみたいなことが手帳に書いたるじゃない。バイトまであと3時間。これは盲点。さあ、とうの僕の調子はというと、世界がグルグル回っているという按配。
 しかし酔っ払っていた僕はポジティブシンキングだったのであります。「ら~いじょうぶ、らいじょおぶ!」と、昭和の漫画の酔っ払い風に一人ごちると、そのまま布団へとダイビング&気絶。息を吹き返したときにゃ、時計は10時半をまわっているというのだから驚きだ。一時間半の寝坊である。
 これは怒られる。布団からがばっと起き上がると、視界がぐにゃりと曲がっている。寝坊どころじゃない。寝坊かつ泥酔である。でも行かねば。バイト先のコンビニまで走る。バイト先まで、まっすぐ、まっすぐ、まっすぐ。しかしまっすぐ行きたいのに斜めに足が行く。用水路の柵にぶつかって全身がはじけ飛ぶ。絵に書いたような千鳥足。ははあ、ここは3次会会場へとつながる道だったかしら? 否、バイト先へとつながる道。立たない足とは対照的に、おっ立ったのはクビとかいうバッドエンドフラグである。
 半ば這うようにしてコンビニへと飛び込むと、本日、大晦日にわざわざシフトに入ってくださる真面目な女子大生がレジをやってる。
 「いや、ほんと、もうごめん! めっちゃ寝坊した! ごめん!」申し訳ない気持ちを精一杯表しているだろう演技を、自身の全ての表現力でもって体現し、女子大生に誠意を見せる。ホントウニゴメンヨ。するとニコヤカに微笑む女子大生、「珍しいっすねえ。ま、暇だったからいいですよ」誠意は通じる。
 しかしこっからが修羅場である。いかに酔っ払っていることを悟られないかが、肝要なのである。例えるなら、飲酒検問で白線の上を歩かされるドライバーの気持ちに似ている。
「俺、ぜぇんぜん、よってないすよ」
自分ではしっかりした足取りで歩いている、つもりである。しかし警官にはばれる。
 それと同じように僕もすぐにボロがでた。シラフの演技をしながら、レジでうずくまっている僕に客からのお声がかかった。「マイルドセブンくれ」あ、マイルドセブンれすね? 自分酔ってませんよ。よってないすよ。手をマイルドセブンがおさめられている棚に伸ばす。しかしつかめない。マイルドセブンはそこにあるのになぜか掴めない。どうしてもマイルドセブンが手の中に入ってこない。怪訝な顔を浮かべる客と横の女子大生。今度こそ掴んだ。手の中には何もない。はて、いつからここは4次元空間に?
 妙な雰囲気のまま、なんとかマイルドセブンを客の前に放り出すと、レジをカタカタと打ち込む。体が覚えているのか、前後不覚に陥ってもレジが打てているのに少し感動した。……と、途端に湧き上がる嘔吐感。ブツブツとうわごとのように客に「ありがとうございました」を伝えると、脱兎の如くかけだし、事務所を抜け、トイレへと飛び込んだ。
 便器の中に、何かをぶちまけ、よろよろのまま事務所に戻る。店長がいらっしゃる。死んだ。きっと隠しとおせない。さようならバイト生活。これから起こるバッドエンドに身を備えながら、店長にわびの言葉を述べようとする。しかし、店長は僕の顔を見ると、ニコヤカにこう言った。
「いよお! Y平くん! 寝坊ぅう? いやあ~、最近疲れとるだろうからなーと思って、あえて電話せんかったんだわ! 疲れ取れたか? ギャハハハ」
 そう言う店長の両手には、一升瓶と、なみなみ酒が入った湯のみが握られていた。就職を考えた。
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5 Replies to “大晦日へべれけコンビニ By Y平”

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    あまりにも休みがあるっていうのは、決して休まることがなくなるって
    ことですよねぇ・・・。将来への不安が止まらん・・・。
    しかし、僕もY平さんみたいにポジティブに、就活生的な精神でがむばります!!

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    毒りんごさん>
    やばい、それ無理かもひれん
    わてるさん>
    休まらないっすねえ。んで忙しくても休まってないんすから人生って不思議ですわ。
    僕らは死ぬまで休まらない……

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    あけましておめでとうございますY平さん!!
    就職を考えたってコンビニにですか??(笑)

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    ゆーきさん>
    あけおめっす! そうです、コンビニに就職考えました。でも今は社員雇ってないそうですわ。つか社員とかそういうややこしいのがいるのかすら分からん職場です。自営業ってかんじがしますわ……

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