シーザードレッシング

8月27日 晴れ
 ヒザの痛みがひどいので、今日は学校を休まざる負えなかった。おやおやまたズル休みですか、と僕を知る人たちが、ニヤニヤしそうだけども、今回は渋々休んだ。というのも、先週作った半導体膜が酸化しちゃうなー、早く測定しないとなーという懸念があった。んだども、布団から出るのにもヒザに激痛が走ったので、俄然学校に行きたくない。まあいいや。半導体ちゃんもあと一日ぐらい持つだろ。
 でも、休む理由は何にするべ、と考えたところ浮かばない。まさか正直に、「1週間で300キロぐらい走ったのでヒザが壊れました」と言うわけにもいかない。といって前半の部分だけすっとばして、「ヒザが痛いので休みます」では、バイト休むときの女子高生の言い訳よりひどいことになる。あれこれ思案した結果、まあ言わなくてもいいやという結論に達し、後日「サークルがあったんすよーすいません」とでも言っておけばよかろうという気になった。サークルは就職以外にも役に立つ。
 で、ヒザが痛いので病院にも行けないという悪循環を体に感じつつ、一日中ゴロゴロしてた。ゴロゴロしながら小説やらエッセイやら読んでた。扇風機を横に、猫とともにゴロゴロ。あー、宝くじさえ当たればな。などと楽に生きる方法を思案してたらそのまま寝た。
 夕方。起きたら母親が帰ってきてて、なぜか得意顔で僕を呼ぶ。見ると、キッチンにはシーザードレッシングが。歓喜! 僕は無類のシーザードレッシング好きで、ことあるごとに、母親にシーザードレッシングを我が家に導入してくれと頼んでいた。だが、母は「サウザンドレッシングのほうがうまいし」と食ってもないのに、勝手にシーザーを見限っており、「試してもないのに不公平だ! もうオレは自分で買う! 買っても母さんらには使わせないからな!」とひと悶着があったのだけれど、やはり母親だ。ちゃんと息子の声を聴いてるもんだ。
 で、夕飯時。母さんが、張り切って大量のサラダを作り、しかもそれを僕の皿にだけ盛り付けてきた。「シーザードレッシング、好きなんでしょ?」とか言いながら、僕だけにシーザー的VIP待遇。なんつーかそういうことじゃない気がした。なんてんだろ? 好きだけど、こう特別待遇でされると気持ちが萎えるっつーか。気負わず普段どおりの空気で味わってこそのシーザーというのか。子供の誕生日パーティーで、両親だけ異常に張り切ってるけど、子供は冷めてるっつーのかな。なんていうかそういう子供心。お膳立てをし過ぎることへの失望。その辺を母さんは分かってない。とか思ったら、僕は来年で24だったのでちょっと僕大丈夫かな? と自分に対して心配になった。
 まあそれよりもシーザーですわ。いつも生協の食堂か居酒屋でしかお目にかかれないシーザーが、家庭にある嬉しさ。そして奇妙さ。ワクワク感。それらの想いを一気に背負って、早速サラダにシーザーぶっかけて食った。モシモシ。モシモシ。うん。うまい。しかし、思ったほどの感動がない。はて、なんだろうか? クルトンが入ってないからだろうか。あるいは、家庭用と思って量をケチりすぎたのがいけなかったか? もっとドバっとかけたほうが……
 などと思案してたら、母さんが勝手に僕のサラダに箸を伸ばした。「あ……」と言うまもなく、シーザーサラダは母の口に放り込まれた。「……うん、うまい」と漏らす母親。しかし表情が物語る。「やはりサウザンだな」と物語ってる。プライドを傷つけられた僕は、「いや、ちげーし。もうちっとドレッシングがついてるところを食いなよ」と言って、わざわざドレッシングをかけ直し、母親に食べさせる。気持ちとしては選手を見限った代表監督に向けて、「あいつの力はこんなもんじゃないんです!」と再テストを懇願する同僚の気持ちか。したら、母親。「うまいけど、サウザンドレッシングと同じじゃない?」などと狂ったことを言い出したので、再度一家に嵐が吹き荒れた。どんな舌をしているのか。言うに事欠いて、サウザンとシーザーを同格に置くとは。お互いの支持ドレッシングを、しきりに罵りあう親子。ドレッシングによる親子げんか。
 最終的には、「もう二度とシーザーは買わない!」「あーあー買うな! オレは業務用スーパーで勝手に買ってくるからな! おたくらは使うなよ!」という、最初の結論と同じ道を辿り議論は収束した。ヒザが痛い。
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3 Replies to “シーザードレッシング”

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    粉チーズかけたらまた違ったんじゃないのかな~
    膝お大事に、です。そのうち腰まで痛めますよ・・・

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