【日記】実家の台所みたいな

 先日インフルエンザっぽい高熱に襲われ、5日ぐらい寝込んだ。人生最高体温を記録し、頭は痛いわ肩こりはひどいわで、頭の中がてんやわんや。おまけに飲んだ薬のせいか、時折妙な不安感に襲われなぜか知らないが世を絶望してみたりと、精神的にも肉体的にも非常に病んでいた。
 熱が出て3日目。38℃あるものの、薬が効いていて気分が若干良くなっていた僕は、ジャガイモが食べたくなった。昔から熱が出たときはジャガイモと決まっている。小さい頃はよくモスバーガーのセットを買ってきてもらって、モスバーガーそっちのけでポテトばかりを食べていた。朝起きたら顔を洗わないと気持ち悪いのと同様、熱が出たらジャガイモを食べないと落ち着かないのだ。
 ということで早速冷凍庫をオープン。ハッシュポテトを発見。お弁当に入れるような可愛い星形のやつだ。いいじゃない。熱があるからこそ無機質なハッシュさんより可愛いハッシュさんのほうがよい。袋の説明文を見ると700wで10分と書いてある。耐熱皿にハッシュ達をINしラップで包む。レンジに入れ(熱で)震える手でタイマーをセット、ぴっ。
 ちょっと動いたらすごい気持ち悪くなってきたので再びベットへ。いやはやレンジでチンするぐらいで弱るとは相当だな、と一人毒づきながらレンジさんのモーニングコールを期待して寝た。
 しばらく寝ていたら、なんだか感じる非日常感。なんかこう危ないような気がする。すわ、また薬のせいで錯乱状態ですかとオッキして心を落ち着かせるためにタバコを手に取る。くさっ。何これくさっ。まだタバコ点けてないのに部屋中ひどく焼けた匂いがする。ぼーっとする頭で瞬間、理解した。
 キッチンに駆け込むと、灰色の煙が一面充満している。やばい! キッチンのラックに洗濯物が干しっぱなしである! しかも彼女の服とかもある! 怒られる! 脱兎のごとくラックに飛びつくと、鼻からキュンとする空気が一気に入ってくる。視界の半分くらいが暗くなったのは単に電気をつけてないとかいう問題じゃない。キュンとするといっても、甘酸っぱい青春の香りというよりは、なんかこう有害物質が僕を失神させようとするようなキュンである。死ぬ。怒られる、とかそういうことじゃない。優先すべきは服じゃない。
 ハッシュポテトがレンジの中で火を吹いていた。おまけにラップも溶けてレンジから有害っぽい煙がシュンシュンでている。熱と煙でクラクラになった体で息を止め、レンジのほうへ倒れ込むように向かうと、タイマーを切る。ぴーっ。遅めのモーニングコール。うるさいわ。
 洗濯ラックをちらりと見ると、黒い煙にいぶされた彼女のワンピース姿はさながら薫製豚のよう。もうあいつは助からない。……キュンキュン。息を止めているつもりでも煙がどんどん鼻に入ってくる。死ぬ。ひとまず逃げなければ。床をはうようにして部屋へ向かう。脱出ついでに換気扇もつけて、ひとまずキッチンから脱出。窓を開けて深呼吸したら、ベランダの換気口から出てきたキュンが口の中に入ってきてまたキュン。ぐほお。
 部屋の中で冷静に考える。ひとまずレンジは切った。ただ、レンジの中ではいまだ星型のハッシュさんが火を噴いていてリアルに熱を持った星になっているし、気を利かせて被せたラップが熱で溶けて有害物質をどんどん発生させている。あいつらを消火しないと部屋までキュンが来る可能性がある。つーか現にちょっと来てる。部屋に戻ってもキュンとする胸の高鳴りはおさまらない。決して恋愛をしているわけではない。
 飲みかけの緑茶が置いてあったので、そいつを干してあったタオルにぶっかけ、濡れタオルで口と鼻を塞ぎ意を決してキッチンへ。キッチンでは灰色だった煙がいまや密度を増して黒い煙に進化し、行く手を阻む。小学生の頃、友達と突っつきあってふざけてた避難訓練を思い出す。「濡れたハンカチを口にあてて、低い姿勢で避難するのよー」とだみ声をあげていた渡辺先生の声が頭の中でリフレインされる。小学生よ、お前らバカにしてっけど、避難訓練、実際役にたつことあるぜ。今なら火事場で無茶して死にかけため組の大吾が、なぜシコタマ怒られたかが分かる。煙なめんなよ大吾。
 め組の大吾の山田孝之は最高にむかついたよなとチラッと頭の片隅に浮かべつつの消火活動。レンジを開け、ジュウジュウ言っているポテトを見る。既に火は消えているようだ。ただ、ラップがうにょんうにょん、湯豆腐に鰹節かけたときみたく踊っていて絶賛溶解中である。耐熱皿が異常に熱くなっているので手では掴めず、フライ返しで耐熱皿を持ち、そのままシンクにぶち込む。速攻で流水で冷やす。この間、ずっと息を止めている。ちなみに体温は38℃ある。勝った。ワンピースがラックから恨めしそうに僕を見下ろしている、気がした。
 キッチンから帰還し、しばらく待つ。耐熱皿が冷えたところで、ポテトだったものと一緒にゴミ袋にぶちこみ、そのままベランダに投げた。火元がなくなったせいか煙はやっとなくなったようだ。
 原因は分かりきっているが、レンジによる熱し過ぎである。知ってた。10分は10分でもあれはオーブンの10分だって僕も知ってた。レンジのタイマーが12分までしかないのに、10分とか随分いくねえーとか思ってた。めんどくさかった。一刻も早くポテトが食いたくて多少横着した。ちなみにオーブンはレンジの上にある。このひと手間を惜しんだ結果がこの大惨事。
 夕方。避難した洗濯物にファブリーズをかけながら体温を測ったら39℃まで上昇していた。こんなバカなことして俺は駄目だ……と悲嘆に暮れるというよりは、この高熱で冷静に濡れタオルを口にできたところは褒めたい、と悦に入っていた。まあ彼女のワンピースからお好み焼きを焦がしたみたいな匂いがしたときは悲嘆にくれたけど。
 ポカリを飲もうとキッチンに行く。キュンはもういないが、なんだかキッチン中に匂いが染み付いてしまって、ゲンナリした。ただ、その匂いがなんとなく懐かしい匂いがして、何の匂いだっけなあと暫く考えてみて、実家のキッチンの匂いだと気づいたとき、母さんもやったんだねとニヤリ。結局その後2日熱は下がらなかった。キッチンの匂いも実家のままである。それはそれでよい。
【ニコ動、実況してました。】

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“【日記】実家の台所みたいな” への2件の返信

  1. SECRET: 0
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    413gz458
    震災から1年がこんなに早くやってきた事には本当に驚かされました。
    しかし、私が本当に驚かされたのはそちらではなく、
    こんな衝撃的な事が、身の回りで起きている事…
    我々が知らない世界は、我々のすぐ側にあるのかもしれませんね
    http://z8Ej2k6H.7.q8a.org/z8Ej2k6H/

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