嫌いになるプロセスと飛行機のブス

 人が他人を嫌いになるには段階があると思っている。会った瞬間嫌いになることはなくて、何かしら「あ、いやだな」というポイントがある。嫌だなポイントをゲットした次からはとにかくその人を嫌いになるための何かをあらさがしするようになる。「あ、あんなことされた。やっぱり嫌いだ」「こんなことするなんてやっぱり俺はこの人が嫌いなんだ」と徐々に嫌いになって行く。そうして最終的に「僕私、あのひとのこと嫌いなんだよね」などと飲み会の席で披露することになる。
 このように「あの人嫌いだ」と思うまでは段階がある。よくぱっぱらぴーな女が「あたしあの人生理的に嫌い」とか思考停止なことを言うことがある(そう、こういうことを言うのはたいてい女である)。ただ「生理的に」嫌いとなった場合でさえその人が不潔だったり、息が臭かったり、何かしらの理由がある。人は人を嫌いになるとき、瞬間で嫌いになるのではなく、「よし、今からこの人を嫌いになろう」と努力をして嫌いになる。嫌いになるためのあら捜しをする。人を嫌いになるには必ず理由が必要なのである。
 先日飛行機に乗ることがあった。疲れていた僕は、飛行機にのったそばからこっくりこっくり、浅い眠りをむさぼりつつ席に座っていた。そんな折、後ろの女が小くだらない談笑をしはじめた。談笑自体はまったくいいのだがとにかく声がでかい。危険ドラッグでもやってるんじゃないかと思うほどのハイテンションででかい声を出すものだから、そいつが話すたびに目覚まし時計のスヌーズのように僕の睡眠を阻害する。こっくりこっくり……「でさあ!」びくっ! こっくりこっくり……「そういえばさ!」びくっ! ってなもん。
 そのとき僕はこの女を「嫌いかもしれない」と思い始めるわけである。こんなはた迷惑なやつは嫌いに違いないと思い込むわけである。嫌いオーラをモヤモヤと生成し始めている最中に、女、「ゴホゴホ」と風邪にかかっているのか、タン絡みの咳までし始める。こうなると今この女を嫌いになるモードの僕は、「そらみろやっぱりこういう非常識な女はうるさい上にウイルスまでまき散らして最悪→だから嫌い」と思うわけである。これこそ嫌いになろうとする努力。一度嫌いかもしれんと思ったやつはありとあらゆる悪いところのあら捜しをして全力で嫌いになろうとするわけである。
 うるさい女に我慢しつつ2時間。ようやく飛行機は目的地に到着した。んで、最後にこのうるさい迷惑女の顔を見てやろうと思った。なぜなら飛行機で無分別に騒ぎ、風邪ウイルスをまきちらすような最悪女はきっと顔もブスに違いないと思ったからだ。ブスであれば僕はこの女を真に嫌いになれる。僕に嫌われるにふさわしい女であってほしい。そんで顔を見てみた。
 したら女、なんか無駄にかわいい上に、マスクもしてウイルス対策もばっちり。僕の中でうるさくて風邪をまきちらしそしてブスであるべき女が完璧な容姿で鎮座しておる。思わず「お、おおう」と言葉が漏れる。しかしふつふつと沸上がる負の感情。「嫌いになりかけた僕の気持ちをどうしてくれる!」とやはり女を嫌いになった。このようにいっぺん嫌おうと思うと理不尽な論理で嫌いになろうとするので人間は面白いです。

“嫌いになるプロセスと飛行機のブス” への1件の返信

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    どうもご無沙汰しております、通りすがりの者です。
    ここのところ仕事が忙しくて。プライベートになかなか時間が割けずに申し訳ない。
    …などと"出来る大人"アピールをしておく。
    はい、今回は嫌いになるプロセスということで。
    タイトルにもあるように「坊主嫌わば袈裟まで」とあるように、嫌いになると着てるものでさえも嫌なものの対象になり得る、ということですな。
    不思議なもんですね、人って。
    一度嫌いかもなんて思い始めると、何もかもに嫌悪感を示すようになって、例えいい部分があってもフィルターがかかってしまうんですから。
    そんな僕は、人を嫌いになるなんてことは…まぁあまりないですね。
    例えその人が人から嫌われている人でも、他の誰かからは好かれている"良い人"かもしれないわけです。
    だから、僕はなるべく人の良いところを見つけてあげたいんです。
    根っからの悪人や敢えて人から嫌われるようにしてる人なんて、極々稀でしょう?(いないとは言ってない)
    なんにせよ、Y平氏の言うような嫌いプロセスにはほぼ同意ですな。
    あ、ちなみに僕が嫌いというか嫌だなぁって感じるポイントのひとつに、「箸の持ち方や食事のマナー、及び飲食店などの店員さんに対する態度」などがありますわ!!!!(声を大に!)

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