5月10日 僕が楽太郎を嫌いなワケ

 昨夜は0時に就寝。起きたのが8時。
 もうね。ギブ。昨日の野球のダメージが激しすぎる。筋肉痛がひどすぎて起き上がれなかった。毎日野球するヤツとか怪物過ぎるだろ。覚醒して体は起きたいのに、起きれない。そのまま落語「時そば」を聴きつつウダウダした。
 12時に重い腰をあげる。ビキビキ。だめ。体を捻ると激痛が走り思わず膝から崩れそうになる。30歳でこれなら40だったら死ぬんじゃない? 野球の練習の後日、40代のおっさんが突然死。死因は筋肉痛。ありえるよ。この痛みならありえるよ。
 腹が減った。筋肉痛が痛いと言えど食わなければ本格的に死ぬ。インスタントの塩焼きソバを作りながらまたまた落語タイム。「初天神」を聴く。昔の楽太郎のやってたやつだった。楽太郎いけすかない。なんで僕、こんなに楽太郎のこと嫌ってるんだろうと思って深い昔の記憶を掘り起こしたところ心当たりあった。
 昔、円楽が楽太郎だった時代。僕が高校生の時。楽太郎がうちの高校に落語しにきたことがあった。教養深い我が校の生徒を小粋な落語で更に教養深くせしめんという試み。まあ僕はその時分、世界史で8点とか取ってたけど。教養から一番遠い落伍生徒であったけど(落語だけに)。
 んでまあ、楽太郎と楽太郎のお弟子さんみたいなのが来た。高校の体育館の壇上に高座をもうけ、まずはお弟子さんからひと話ぶったわけですが、これが面白くないのなんのって。盛大に滑ってた。完全に場が凍り付いてた。
 お弟子さんはオチらしきものを言った後、お義理みたいなパラパラとした拍手を背にすごすご退散して行った。完全に場がしらけたまま、いよいよ真打ちの楽太郎が登壇した。さあ落語するのかと思いきや、まずは枕。何の話をするかというと完全に自慢話をしていた。「自分なんかね、元がいいのか、勉強せずに青山学院大学に入ったんですよ」とかなんとか。ああ、なるほど今にして思えば、進学校だった我々生徒に対する楽太郎の精一杯のおどけ。いつも歌丸に皮肉を言うのと同様に我々に皮肉めいた笑いを。
 とはいえ、そこは高校生。自慢話を自慢話としてしか受け取れない。場は完全にしらけた。早くおわんねーかな的な。でもその自慢話が枕でこれからそれに因んだ気の効いた落語が始まるんだろうと、一部の落語好きは思っていたに違いない。だが楽太郎。自慢話をするだけして終わった。まさかの枕だけ。落語しない。落語家呼んだのに落語しないとは何事か。
 つまらねえもの聴いちゃったよなんて沈んだ気持ちで教室に戻る。しばらくすると数学担当の学年主任が来た。学年主任は数学を始める前によっぽど腹が立ったのか、「さっきの楽太郎はひどかったなー」などと、一通り楽太郎に関する悪口を言った後、「一番言いたいのはさ、落語をしろって話なんだよ!」と叫んだ。俺は心の中で頷き、その日から楽太郎を目の敵にし始めたわけである。

5月9日 今シーズン初野球

 昨夜は志ん朝の『そば清』を聴きながら寝た。落語、おもしれえ。最近は練習のため落語を聴きながらセリフを繰り返すようなことをやっているんだが、聴くとやるとでは大違い。噺家はすごい。滑舌、表情、話の間、全てレベルが段違い。特に滑舌がやばい。あんなに速く喋れない。これは訓練次第でどうとでもなるはず。あめんぼあかいなあいうえおを繰り返す。あめんぼあかいなあいうえお、かきのきくりのきかきくけこ。
 朝は気分よし。野球の初練習に向かう。今日は寒いとの予報が出ていたが日和がよく体感的には暖かかった。絶好の野球日和。
 初野球。野球のために昨年の冬から必死に筋トレしてきた。その効果は出たか、否か。
 メニューは内野ノック、外野ノック、フリー、ロングティー。仕上がりとしては打撃は20%、守備は50%、ピッチング50%と言った感じか。まあ始まったばかりで仕上がりもクソもないが。
 そういえばピッチングが例年より良くなってた。球速は今時期なので出てないが、スライダーのコントロールとキレが上がってた。外角低めにバカンバカン決まった。たぶん一球も投げ損なってない。ふむ。これは筋トレの成果か。背筋トレーニングと、フットプレスあたりが僕のスライダーを良くした感。今年ピッチャー俺、あるで。
 野球から帰った後は死んでいた。体中、特に背中が痛い。ラーメンとおにぎりを食った後ずっと昼寝した。名探偵コナンの夢を観ていた。起きたら頭上のテレビで本当にコナンのアニメがやっていた。どこからが夢でどこからが現実なのか。小五郎のおっちゃんもこんな気分?

5月8日 ブロック崩しを遊べるレベルにする

 昨夜は0時に眠るも、睡眠薬を飲まなかったため眠りの質が悪かった。そのため朝起きると気分は激悪で、昼まで寝る。まあいいでしょう。
 落語シナリオを書こうかと思ったが、どうにもつくりかけのブロック崩しが気になるので遊べるレベルにする。下記のリンクから遊べるようにしておいた。
ブロック崩し
 【改良点】
  ・BGMとボールの接触音追加
  ・ボールがロストしたときに、再びボールが出てプレイ続行
  ・ブロックに色をつけた
  ・全てのブロックを破壊した後、再びブロック復活。プレイ続行できるようにした
 んで、またしてもプチ実況。下記で30秒の実況動画をあげておいた。


 遊べるレベルにはなった。スコアとか残機数とかも実装しようとしたけど、あまりにもブロック崩しそのものがつまらないのでやる気が折れた。次はニンテンドー64のゴールデンアイテイストのゲーム作ってみよう。たぶんそれなら面白いはず。

5月7日 色々できるという喜び

 昨夜は三国無双7のセリフ音声集を聴きながらぐっすり。朝は6時半に起床し茶太郎に挨拶。朝キチンと起きれたのは久しぶりである。睡眠としてはいつもの10時間睡眠ではなく6時間睡眠であったが、体調も気分もいい。これは復調の兆し。
 午前中はぐだぐだ落語を聴きながら支度。今日は通院の日。
 長野病院に着く。珍しくGoogle Mapを使わずに行けた。道順も記憶出来ている。ちょっと前は道も覚える事ができてなかった気がする。こういう状態になると、ちょっとしたことをできるってだけで嬉しくなる。できなかったことができるようになっていく。この感じ。子供のような感覚。悪くない。
 前回こっぴどく説教を受けたギバちゃん似の主治医に診察してもらう。前回とはうってかわって和やかなムードで会話はすすむ。5月19日に復職予定のため、復職のための事務手続きの話が大半。
 このギバちゃん。口は悪いが確実にいい人である。辛辣だが親身だ。頼りがいのあるお父さんみたいな感じ。ああ、僕はただ一発がつんと叱って欲しかっただけだったのかもしれないな。「たるんどる! しっかりしろ!」と。ただギバちゃんは少々わきがらしい。ただわきがも少し愛しいと言うか可笑しいというか。とにかく正の感情で診察室が満ちているのは確かだった。臭かったけど。
 帰りしな、ガストで昼食。DAISOも近くにあったので金魚の濾過フィルターとお掃除スポンジを購入する。
 帰宅後は金魚の水槽を洗った。水も9割ほどかえてやる。新しい濾過フィルターもつけてやった。最近金魚が転覆病気味だったため、ひとまず水質を良くする試みである。1時間ぐらいしたら転覆病も治り元気に泳いでいた。睨んだ通り。金魚が体調悪そうだなと思ったら直ぐに水換えをすればよい。それで治らなかったら濾過フィルターを交換する。それだけで大体治る。僕の金魚経験値もあがってきたようだ。先代の金魚5匹の死も無駄にはならずこうして今に生きている。満足。
 いい日和だったため近くの公園まで足を延ばす。公園のベンチに座りながら新作の落語のプロットを考える。そう、落語。色んな事に手を出してきた僕、落語やろうと思います。とはいえ、大学時代に人形劇サークルで落語のまねごとみたいのをやっているのでできると思う。簡易だがプロットはできたので早速明日から脚本化にとりかかる。ちなみに録画してニコ動にうpするつもり。
 色んな事ができるようになってきた。嬉しい。これからも気を抜かずに気を抜く事にする。

4月28日 精神科で説教をくらう

「そらね、あんた。奥さんとちゃんと会話しないとだめだよ」
 長野病院は精神科の診察室で、柳葉敏郎似の精神科医は呆れた顔でものを言っている。ギバちゃんの前で借りてきたネコのように縮こまり、「はあ」とか「そうですか」とか気の無い返事ばかりを返す壊れたPepperのようなのが僕である。
「仕事にやりがいがないとかねあんた。やりたいことだけやっていられる幸せ者なんて、この世で一握りぐらいしかいないように思えるけどね。あんたはその一握りになりたいと、まあ、そう言っているわけかい?」
 責め立てられていた。この医師の中で、僕は結婚生活に悩んでおり、仕事にやりがいを感じていない一健常者としてのシナリオを組まれていた。
「あんたはこの病院にきて、わたしらに何をしてもらいたいんですか? どうなりたいんですか?」
 幸せに、なりたい、です。喉奥のごく手前まで出かけた言葉を飲み込み、僕は黙り込んでいた。お門違いだ。幸せになるならないを相談するんであれば、精神科医ではなく牧師や神仏の像に吐き出すのが上策であろう。
 ギバちゃんはひどくいらついているように見える。あるいは自称精神病患者の擬態を看破せしめんとし、テクニックで患者に悪態をついているのかもしれない。挑発に乗ってくるか否か、その反応をさぐり、心の病の真偽を確かめているのかしらん。僕はそのようなことを思っていた。僕も同じくひどくいらついていた。
「とにかくね、本当に状況を変えたいんであれば、奥さんとの結婚生活を見直して、仕事を変えるとか、なんとかやってみないとね。うちじゃあどうにもならないよ」
 ギバちゃんがみのもんたに見えてくる。思いっきり生電話のコーナーテイストの話題をかれこれ30分、えんえんと続けているギバちゃん。人生相談@精神科。ギバちゃんがそんなものをやらされるのをウンザリしているのと同様に、僕もウンザリしていた。そんな話をしにきたんじゃないのは僕だって分かっている。
「すると、このような症状は、疾患ではなく環境にあると、そうおっしゃいたいんでしょうか?」
「そうそう」
 ギバちゃんの顔にMacBookの詰まったリュックをぶちまけたいという衝動に駆られた。ここでギバちゃんに暴行を働き、窓を割り、カルテをビリビリにやぶいてそれを食べればあるいはギバちゃんも僕を診る気になろうか。そんな妄想をしつつ、僕の正常なる理性が「さすがにそれは」と尻込みを促す。うん、正常である。正常なのである。
「ひとまずね。薬を変えて様子を見させてください。この薬、気分の波を和らげる効果、あるからね。それとこれ二錠、睡眠薬。どちらも夕方に飲んでぐっすりと寝てくださいな」
 ギバちゃんはみのもんたから急速に精神科医の顔に戻ると、事務的に説明をし出す。
「趣味は?」
 所在なげにカルテをつつきながら、唐突にギバちゃんが切り出した。何? なんて?
「趣味は?」
 繰り返すギバちゃんの顔には微笑が浮かんでいる。
「小説を書く事……ですかね」
「ほう。何の小説を書くのかい?」
「SF小説とかラノベとか」
「いいねー。SFかあ。売ったりしてるのかい?
「いえ、まだ本を作ったりはしてないですけど。Web上で公開したりとかしてますね」
「SFだったらあれかい? ○○○○(作者名失念)とか? 読むのかい?」
「ああ、まあ○○○○は存じ上げませんが、星新一とか筒井康隆とか」
「いいね。パプリカ?」
「あー、面白いですね」
 ギバちゃんの顔に初めて笑顔らしい笑顔が浮かぶ。愛想の無いキャバクラで、ようやくキャバ嬢との共通の趣味を見つけた30男の気分。与太話に花が咲く。40分何円とかで僕はギバちゃんとの時を買っている。無為な時を。
「するとやはり奥さんとの共同生活でそういうものを書く時間もない?」
「はあ、まあ」
 露程もそう言う気持ちはないが同意しておく。そもそも時間があろうとなかろうと書ける時は書ける。小説とはそういうものだ。ただただ早く話を切り上げたかった。
「何かをやりたい気持ちはあるのに、奥さんとの共同生活でそれが妨げられていると。はあ、やっぱりね。こういうことは一度奥さんとじっくり話してみるに限るよ」
 話すって何を?
「それじゃああれだ。うーん……5月7日の午前。またね、診察に来てくださいね。今日はもういいですよ」
 カレンダーを指差しつつ目を伏せるギバちゃん。もはや僕の顔を見てさえいない。
「はい。ありがとうございました」
 僕は受付で薬が出てくるのを待ちつつ人間失格を読む。愛想の悪いギバちゃんだったが気分はなぜか晴れやかだ。精神病者として扱われなかったこと。針のむしろのような気まずい診察室。まるで虫歯もないのに歯科医に来て、歯石も歯垢もないときて、「さあどうしよう。何をしましょうか?」と困惑顔の歯科医を見た気分。全てが健常である事を示していた。社会になじめないのと同様に精神科になじめなかった。しかしなじめないことがプラスに感ぜられたのは初めてである。
 働こう。ただそれだけを思った。
 夜は新しい薬が効いたのか23時に寝る事ができた。夢を見た。とんでもなく楽しい夢だったはずだが翌朝起きたときには何を見たのかさっぱり思い出せず、ただ顔を洗って歯を磨いた。昨日のギバちゃんにえぐられた記憶を思い出しながら、しかし自然と笑みがこぼれ活力に溢れていた。今日は美容院に行く日だ。