大企業の技術者に就職しようとする君へ。何もできないクズになる可能性あるからマジで

 いい大学に入って、大企業に入って、定年まで安定して働く。言わずもがなそういう働き方が廃れてきています。シャープやら富士通やら大手メーカーがどんどん早期退職者を募集する昨今。いわゆる開発者として手に職をつけてえ! とか言いながら理系大学から大手企業に入ろうとしている意識高い系のアナタ。やばいですよ。
 というのもIT系の大企業の場合、全部が全部というわけではないが、技術系の仕事はすべて外注に任せているという場合が多いのです。もちろん発注する際は、「自分でもやれるけど、人数が足りなくてできないから外注します」という体を演じながら発注書を作るのですが、そういういわゆる発注書を作ってる大手企業様の技術者は、hello worldをかけなかったりします。ホント、ライブラリのリンクも張れない連中がはびこっています。Androidの開発を数年やってましたが、うちの会社ではEclipseやらAndroid Studio入ってない人が80%くらいいました。Activityって美味しいの? 状態の人がPMやってました。こんなこといいな♪ できたらいいな♪ と鼻歌歌いながら、Android Developerのサイトで禁止されている事項を平気で仕様書としてあげてくるお馬鹿さんがゴロゴロいました。彼らは特に教育を受けていないにもかかわらず、ユーザビリティという名のいわゆるその人の好き嫌いを押し付け、とんでもな仕様を上げてきます。そこにはAndroidの思想もなければフィージビリティの調査も含まれていません。
 一方で外注を管理する人のやることは何かと言いますと、進捗管理のエクセルを作ることから始まります。そこではRedmineのチケットを切り、ガントチャートを作り、そして外注先に「いつできるの?」という催促をするだけという簡単で素敵な仕事が待っています。外注がものすごく深い問題解析をしている横で、ソリティアをするか、漫然とエクセル表を閉じたり開いたりしましょう。
 ホント頭きてるんですよ。外注管理という名のソリティア職人たち。大企業に入ると、高確率でその職人の仕事が回ってきます。ただソリティア職人にも2パターンの人がいて、本当にソリティアやり続ける人と、外注には及ばないものの技術を身につけようと空き時間で勉強し、外注の言っている細かい動作仕様を作れはしないけれども理解は出来る人。前者は定年まで給与を絞り続けることしか考えていませんから事業縮小のあおりを受けて早期退職を食らうタイプです。後者はまだ見込みがあります。その人の言葉には「いつできるの?」以外にも語彙がありますので、外注からの信頼も若干得られ、IT系の専門学生より少し劣るぐらいの知識は身につけられます。そう、ただしIT系の専門学生よりすこし劣る程度が関の山なのです。
 プログラミング大好き! 技術大好き! みたいなマゾヒストな学生がいましたら、ぜひとも大企業に入らず、外注先の企業に入ることをお勧めします。元ソフトハウスの先輩に聞きましたが、どう転んでもやらねばならないので自然に技術はつきます。多分厳しい戦いになると思います。だって相手のほとんどは「いつできるの?」としか言わない壊れたPepperみたいなやつらですからね。ものすごい残業時間くると思います。しかしそこで培った技術は大企業のなんちゃって技術者の比ではないはず。そこまで行けば、「俺、めっちゃ技術あります!」っつって、夢の大企業に転職できることでしょう。技術を持った管理者は壊れたPepperではありません。出世もするでしょう。出世して、給与どろぼうをしているソリティア職人達、喫煙所から出てこない技術者(笑)を軒並みクビにしましょう。そうすればスリムで筋肉質な大企業の完成です。どうでもいいけど筋肉質ってなんでしょうね。筋肉質とか抽象的なこと言う幹部社員が実はソリティア職人であることもあるので注意が必要です。若者よ大志を抱け。そしてゴミどもをクビにしろ。労組は頑張ってる社員を守ってくれるが、頑張っていない社員も守る。あなたしかいない。クビにするのはあなただ。俺はもう疲れた。

5月14日 ギバちゃんに復職の書類を書いてもらう

 昨夜は深夜1時に就寝。起きたのが9時。気分はやや悪い。今日は通院の日だからであろう。最近分かってきたが、何かイベントごとがあるとめんどくさくなるらしい。これは病気ではなく性質なのかもしれない。
 10時。重い腰を上げて長野病院へ。この病院、予約とかないのでひたすら待ち時間が長い。ヨッピーさんの記事などを見て時間をつぶす。
 診察は受付してから30分後。おなじみのギバちゃん似の主治医とご対面。相変わらずわきががすごい。でもかっこいい。渋いんだよね。世間話をしながら、会社からもらった復職個人診断書を渡す。主治医の見解を書いてもらう。ギバちゃん、少しめんどくさそう。その場でばばーっと書くと診断書と言う形で渡してきた。これを産業伊に渡して面談したら祝、復職である。祝、なのかね? もうちょい長い春休みを満喫したい気もしている。
 帰ったらセイコーマートのお弁当などを食べつつ落語を聴く。立川談志の「子ほめ」。シャドーイングを試みるがやはりうまくいかない。奴ら僕の2倍くらいのスピードで喋るものだからやはり芸人は凄い。ただ、シャドーイングをやるたびに確実にうまくなっているのでやればやるほど追いついている感じはする。
 落語シナリオを書こうと思ったが疲れが出たのかそのまま6時まで昼寝。今日は気力がわかなかった。こんなんで復職できるだろうか。産業医面談は上司と電話したところ明日ということになった。急だ。仕様変更も急なれば、復職手続きも急なのがウチの会社の性。怖い怖い。

5月13日 ジャッキー万歳

 昨夜は0時に就寝。起きたのが6時半。珍しく早起きできた。歯磨きなんかもしちゃったり。コーヒーも入れた。美味い。
 9時前にはスウェットに着替えジムへ。昨週の野球練習がいまだに響いており背中が痛い。ので今日は少し軽め。下半身を重点に。ランニング30分。フットプレス/エクステンション/カールを3セット。アームカールを限界の重さで3セット。腹筋マシン2セット。バテた。いつもはこれにくわえて上半身のトレーニングをするところだが野球シーズン中は無理である。野球練習して3日経つのにまだ体が痛む。ピッチングなんてやっちゃったもんだから。25過ぎてから体がよく動かん。いや、動くは動くが翌日からのダメージが半端ない。それを考えると山本昌(49)は怪物だ。
 昼はチャーハンを作り、レンタルしてた「香港国際警察」を見る。ジャッキー映画。ジャッキーもこのころは大した年齢になってたはずだけど、まだ走行中のバスの上に乗ってた。怪物がここにも。いや、スタントもさることながらストーリーもけっこうよかった。ジャッキー扮するチャン刑事が抱える闇とそれを解決していく様の演出には思わず唸らされた。
 まあジャッキーはよかったんだけど、これ観てる最中に変な虫に腕を噛まれた。黒いてんとう虫がでっかくなったみたいなやつ。畜生、窓開けてたから。しかし虫も何も僕に嫌がらせをしようとして噛んだのではあるまい。噛むなら噛む理由があったはず。グレゴール・ザムザかもしれぬ。
 叩きつぶしては可哀想と思いティッシュにくるんで窓の外のコンクリートの上に放ってやった。放った先を見ると何もない。飛んで逃げたか、はたまた毒虫は僕の幻覚だったか。ニョキニョキと僕の心からはい出してくる毒虫。とってもとっても消え失せる。すっと忘れた頃に現れる毒虫。怖い怖い。心なしか噛まれた腕がやや腫れてきた。ひどくならねばよいが。腕も痛いが背中も痛い。筋肉痛。毒虫どうでもいい。まずはこの筋肉痛をなんとかせねば。何? それをとる法はないってぇ? どうしてだい? 言ってやろうかいこのベランメーめ。歳のせいだよ。

5月12日 ダツモウプレイ

 昨夜は0時に就寝。したのだが眠りの質が悪かったのか目覚めたのが昼の12時。気分は最悪。外を見ると曇り空。ははあ、この病は天気にも影響されるのだなと一人ごちてノソノソと床から這い降りる。
 起き抜けにカレーをいっぱい喰らいながらレンタルしてきた「超高速参勤交代」を見る。参勤交代をモチイフにしたコメディーだ。佐々木蔵之介に西村雅彦、六角精児が出てるってんでさぞこれは面白いコメディーになってるだろうと思いきやまずまずの出来。なんかテンポ悪かった。超高速のはずなのに。全体的に画面が暗く、誰が何やってんだか分かりゃしない。ラストシーンの気の抜けたところで画面がぱっと明るくなったところを見ると、画面を暗くしていたのはリアリティーを出すための演出だったと分かったが、コメディーならコメディーらしく見やすくしてもらいたかった。
 言うは易し。偉そうに演出やら脚本にいちゃもんつけますが、じゃあおめえ書いてみろと言われるとできやしねえ。これがネット民のネット弁慶たる所以。匿名で叩きたいだけ叩くのはスカッとしますが虚しい。こういうネット弁慶の恥を抑えて感想を一言いうなれば、僕が書けないぐらいの面白さはあったというぐらいか。ご苦労様です。
 悪いの喰らっちまったよなんて沈んだ顔で街に出る。目的はヒゲ脱毛である。はあ、行きたくねえ。生きたくねえと思うほどの行きたくなさ。ははあ、今朝方気分が悪かったのはこれ(脱毛)のせいだなと合点が行く。
 なにがやだってマジで痛い。レーザーでもって皮下の毛根を焼き切るなんて考えたヤツは拷問器具かなんかをやらせたら一流に違いない。バチン! バチン! つむった目の奥でレーザーが光る。麻酔クリームなんて効きゃしねえ。いや逆に。効いてこの痛さだからマジでこれを考えたヤツのサディスト性といったらたまらない。
 ごちゃごちゃ考えながら診察台に寝そべる。施術者はおなじみのかつみさゆりのさゆり似のねーちゃん。可愛い。「んーとぉ、この前しゅごく痛がってましたからぁ、ジュールを少し下げようと思うんでしゅけどぉ。22から24でどれがいいでしゅぅ」って舌っ足らずに喋る姿は幼モノのAVに出れるレベル。可愛いなあなどと思いつつ、一つ今日はこのさゆり似のチャンネーに強いレーザーを当てられてよがるプレイだと思い込む事とする。24、24でお願いします。「わあ、だいじょぶですかぁ? 痛かったら、遠慮せじゅにいってくだしゃいねぇ」と返ってくる。語尾に「キャピ☆」とかついても怒らないレベルの可愛さ。しかもナース姿。いいねえ、コスプレかい? 本寸法だねえ。
 イケる。今日は逝ける。この拷問器具もさゆりがやってくれるのであればそれは性玩具になる。はあ、勃起したらどうしよう。むしろ本当に逝ったら? ワクワクしながら施術が始まった。バチン! 「ひゃあ!」
 結果から言うとジュールをあげすぎて顔の下側が見事に腫れ上がったおっさんが出来上がった。下膨れのヒゲ面のおっさんとナース服のさゆり。なるほど幼モノのAVのパッケージとしては見事なものである。痛む下あごを押さえながらスゴスゴと、男優は退場。施術室には「やりしゅぎちゃったぁ」などと呟きながら困った顔をするさゆりが残る。なるほどなるほど。なにをやりすぎちゃったのかなあ?(スケベ面で) これは上物のM系ロリAVの一場面としては上策。よきかなよきかな。ばかたれ。いてえよ。

ナレーター「プロメンヘラの朝は早い」


 北海道札幌市。閑静な住宅街の一画。ここに一軒のアパートがある。プロメンヘラの仕事場である。
 社畜大国日本。精神疾患により医療機関に罹っている患者数は増加の一途をたどり、平成23年には精神患者の数は320万人にも達している。その中で有数のプロメンヘラとして名を馳せる男がここにいた。我々は、プロメンヘラの一日を追った。
 プロメンヘラの朝は早い。時刻は朝6時。飼っているウサギがガタガタとケージをかじる音が聴こえてくる。寝室からのそのそ出てきたのはプロメンヘラだ。
——朝、早いですね?
「ええ。まあでも目が覚めちゃうんですよね。こんな仕事をしているとね」
 さりげなく不眠を訴える言葉遣いにプロの技が光る。
「それにウサギの世話もしなきゃならないし。最近はこいつだけが友達です」
 そう言っておもむろにウサギのケージを開け、トイレの糞尿などを拭いていると唐突にウサギにかじられるプロメンヘラ。
「ウサギも分かるんですかね? このクズ人間がって」
 笑うプロメンヘラの顔には一切の自虐は浮かんでいない。ズシリとただただ沈んでいる。ここにもプロならではの表情があった。
 冷蔵庫を開けるプロ。取り出したのは卵と牛乳。プロは生卵に醤油と一味をかけるとそのまま一飲みする。牛乳にはプロテインが混ぜ込んである。
「ロッキーで、5つ、いや6つかな。生卵を飲むシーンあるでしょ。あれ、あこがれてましてね。プロテインと牛乳も飲む事で筋肉増進を図ってます」
——体、鍛えてるんですか?
「ええ、やることもないので」
 仕事へ向かう妻を見送り、金魚にエサをあげると、プロはおもむろにリビングに掃除機をかけ始めた。
「綺麗にしとかないと、嫁がやっぱいい気はしてくれないんですよ。プロがいても正常な家庭生活を保たねばならないっていうジレンマがありますから」
 掃除が終わると寝間着のジャージのまま外へ出かける。
——これからお仕事ですか?
「ジムですよ。この生活、体が資本ですからね。何もしないでボケっとしているのは時間がもったいないです。それに」
「世間様に申し訳がなくって。僕なりのエクスキューズです。何かやってるぞって。ただ……」
「プロならエクスキューズ探しなんかしないんだろうなって。プロは存分にダラダラできると思います。ここが」
「プロとアマとの境目なんでしょうね」
 プロの顔が曇る。
 ジムで汗を流し帰ってきたプロメンヘラはすぐさまユニクロ一色の服装に着替え始めた。
——これから仕事ですか?
「いえ、通院です。精神科にあと一ヶ月休養が必要ですっていう診断書を書いてもらうんですよ」
 プロメンヘラが運転する車内。車内には落語が流れていた。
——診断書って言いますが、そんなに簡単に出してもらえるものなんですか?
「ええ、正直言ってザルです。向こうも商売ですしね。簡単なアンケートと口頭答弁だけで診断がくだります。答弁では演技力が必要ですね。いかにも陰鬱な表情を見せるのがコツです。というか最終的に向こうが『どうする?』と聞いてくるものですから」
——どう返すんですか?
「『休みます』と答えるだけでOKです」
 そう笑うプロメンヘラの横顔には、休職で迷惑をかける様々な人に対する申し訳なさ、そういったものはみじんも浮かんでいなかった。ここにもプロならではのメンタルの強さがある。
「最初はね、あー申し訳ないなー。とか思ってたんですがね。ただ、長くなると、ね。それを当然のモノとして受け取らないとこっちも気が保たないんですよ」
——そんな自分をどう思われますか?
「ええ、クズですね(笑)」
 そう言って診察室に消えて行くプロの背中は丸まり、いかにも不健康そうであった。こうしたちょっとした移動にもプロは一時も気を抜かない。気を抜かず不健康のマントをかぶる。
 30分後。
 診断を終えたプロメンヘラが戻ってきた。浮かない顔である。
——診断書はもらえましたか?
「……」
 プロメンヘラはカメラを手で塞ぎ、撮るなとの意志を示してくる。不機嫌な顔。急いで乗り込んだ車内には楽太郎の声が響いている。
「俺、楽太郎きらいなんすよね」
 自宅に戻ってきたプロメンヘラは薬を飲む。テレビにはジャッキーチェンの「酔拳」がながれている。レンタルDVDだ。その間に昨日の晩飯の皿を洗うプロ。目線の先はテレビから離さない。プロらしからぬ平行作業だ。クルー達の間に困惑の空気が漂う。
——病院はどうでしたか?
「……説教、くらいましたよ。あんた、そらいくら休んだって変わらないよって」
 皿洗いを終えた後、またいつもの寝間着のジャージに着替えて再び外へ出るプロ。ここでもプロらしからぬ行動力である。いったいどうしてしまったというのか。
——どこに行くんですか?
「温泉」
 そのままクルーを残して独り温泉へと向かうプロ。我々クルーも別のロケ車で後を追う。プロはそのまま姿を消した。
 我々がようやく探し出した温泉の休憩室にプロはいた。浮かない顔でカレーを食べ、コーヒー牛乳を飲んでいた。
——病院の診断はどうだったんですか?
 プロはようやく重い口を開く。
「それだけ外出したりモノを書いたりできるんであれば正常ですよと……言われちゃいました」
「いわゆる戦力外通告でしたね。あぜんとしましたよ。僕はただ診断書をもらいたかっただけなんです。それがこのざまですよ。それに、この長かった選手生命が終わっちゃうと思うと」
 プロは一瞬だけプロらしい沈んだ顔をのぞかせた。
「くやしくてね」
 現在。鬱病を模して診断書をもらい、働かずに会社から給料をもらういわゆるプロメンヘラが社会には横行している。今回われわれが取材したプロもその一人だが、彼の選手生命は絶たれようとしていた。しかし彼はできうる限りプロを続けると我々に話す。今後も彼のプロ生活は続く。彼は別れしなにこう呟いた。
「次は社内ニートを狙うしか……」
 彼のプロとしての生活は更なるステップへすすもうとしていた。