中国で髪を切る

髪を切りたい。と思った。中国で。
というのも絶賛南京は中国へ出張中の僕である。中国のソフト会社に常駐し、現地中国人の指導をする、というと聞こえはいいが実際は言葉の壁がおおいに立ちはだかる。コミュニケーション手段はもっぱら日本語と英語で、しかも僕の英語力たるや、もし英語ではじめてのお使いをやるとしたらギリギリ失敗するレベル。僕「I want to… I want to…」中国人「 ペラペラペラペラ?」 僕「T,thanks… (うっせえ! 今それ言おうとしてたんだバカ!)」ってなもんで辛うじて通じる。通じてると信じてる。通じてるよな?
まあ会社はいい。ギリギリ英語が通じるからいい。では会社以外はと言うと、英語を喋れる人すらいなくなるので難易度がとてつもなく上がる。This is a penレベルも喋れないため道を聞く事すらできない。
そんななか髪を切るのである。会社の中国人娘が僕を見て「ホームレスみたいな髪型みたいwww」とバカにしくさったから切るのである。3日目ぐらいでこれを言ってくるのだから中国の女の人ってすごい。腹が立ったので、いっそはやりのヘアースタイルにして、態度を改めさせてやる! と息巻いた。そうこれは仕事なのである。現地常駐者として問題児の態度を改めるのを目的とする。言葉の壁など気にしている場合じゃない。
ということで休日。ホテルの裏に日本語を喋れる美容師さんがいるよ! という情報をネットで入手し早速向かう。いや、やっぱいきなり中国語オンリーってきびしいじゃない? だからさ、最初は日本語でならしてさ? 中国の散髪屋のシステムを知ってからさ(ry。
色々いい訳を頭に浮かべつつホテルの裏路地に入って行く。
路駐でうめつくされた狭い小道には子供やら放し飼いの犬やら、商店の前でじっと前を凝視してるおじいちゃん、連なった家々の軒先には洗濯物が干されていたりと生活臭がすごい。ふと見ると、なぜかこんな生活感のあるところで風船売りが風船を売っていたりする。子供達は道ばたで風船を特におもしろそうでもなく蹴っている。ひたすら蹴っている。
あ、美容院ないな。と直感した。こんなところに美容院があったらビビる。昔、母親に「ここ美容院だから」とか言って1500円の床屋に連れて行かれていたものだがせいぜいその類のものしかないだろう。ネットの情報は2005年の書き込みだったので、もしかしたらもう店を畳んでしまっているかもしれない。会った事もない美容師の挫折を思い浮かべながら路駐の車をすいすい抜けて道を進んで行く。
散髪
するとあった。事前にネットで「髪」という字だけは調べていたのでたぶんこれである。看板の三文字目が確か「髪」という字を示してるはず。恐る恐る店の入り口を眺める。おばさんが奥のソファーで寝転びながら面白くもなさそうにテレビを凝視している。これ絶対日本語通じないパターンのやつである。おずおずと入ろうか入らまいか迷う僕の後ろ姿はとてもはじめてのおつかいチックである。まあ被写体は可愛い子供ではなくホームレスの髪型をしたおっさんだが。
店先のホームレスに気づいたおばさんは、一発ためいきをつきながらだるそうに立ち上がる。僕はエクスキューズミーを連呼しながら入店。おばさんはニコリともしないし何も言わない。いらっしゃいませの一言はもちろんない。むしろテレビの続きをちらちら見ている。「髪を切りたいんですが」と恐る恐る日本語で言ってみる。しかしおばさんはやっぱりテレビに夢中である。日本の美容師さんなんて初めから存在しなかったんや。
諦めた僕は髪の毛を指差し、ジェスチャーで髪を切る動作をする。おばさんはめんどくさそうにあごで席を指す。いいの? いいの? とか日本語で聞きながら僕はおもむろに席に座る。
散髪台を見ると、大量の髪の束が散乱し、その中にズボッとはさみが刺してあった。嘘みたいだがまじで刺してあった。まるで髪の束がはさみのラック代わりですよという具合に刺してあった。衛生と言う概念はもはや存在しないし、言うだけ野暮な雰囲気がおばさんからプンプンする。のでおとなしくしている。
あらかじめダウンロードしておいた松潤の画像を携帯で見せて、これ! これ! と連呼する。おばさんは怪訝そうな顔をしながら画像を一瞥し、軽くうなづく。「絶対わかってないでしょー」とか日本語で笑いかけるがおばさんはテレビに夢中である。絶対分かってないやつである。
おばさんはテレビもそこそこに、入念に僕の髪をとかし始める。あ、そこは日本と同じなんだ。日本の床屋と似たような手つきに少し安心していたら、突然おばさんから舌打ち。僕にかけていた散髪ローブをぬがせると、あごで「立て」と促してくる。え、なんか悪い事やったかなとマゴマゴしていると、洗髪台に連れて行かれる。僕の天パは世界共通で切りにくいらしい。髪の毛をあらあらしくシャンプーされ、濡れたまま再び散髪台に座らされる。
髪をとかしきったおばさんは少しご満悦の様子。一息ついたあと、いよいよハサミの登場である。ドキドキしながら鏡越しのおばさんを見つめる。ざくざくざく。ざくざくざく。ざっくざく切っていく。すくとかそういうことは一切しない。オールざくざくである。ガンガン落ちて行く僕の髪の毛を見ながら、ああ、この髪の毛もハサミのラックになるんだろうなと切ない気持ちになる。
そんなこんなで、ときどきテレビを見ながら手を動かしているおばさんにドキドキしながらも、無事散髪は終了した。
髪
*ホテルで撮影したものです
すごい。当たり前だが全然松潤じゃない。天パの7・3の何かになった。ただ、妙な髪型にされた怒りは沸いてこない。むしろ面白くてずっとにやついてしまった。なんで俺中国で髪切ってんだろうと爆笑したい気分になった。
にやにやしながら、つたない中国語で「謝謝、好了(よい)」と伝えると、おばさんは初めて微笑を浮かべ「不客气(どういたしまして)」と言った。おばさんは初めて喋ったのである。入店以来一言もしゃべらなかったおばさんが喋った事に嬉しくなり、僕は手を振りながら店を出て行った。代金も20元(320円ぐらい)とお安く、なんだか中国が好きになれるかも、と思った瞬間だった。
そのようなことを出社後、中国娘に伝えたところ「その髪に20元とか何してんの? あたし12元で切ってるよ」的なことを言われたので中国は置いといてやはりこの中国娘をどうにかするしかないと変な7・3の髪をかきながら決意した。
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【エッセイ】職場のヤクザ的な人

 仕事でヤクザ的な人に難癖をつけられたため珍しく深夜残業をした。ヤクザ的な人の特徴としては分かっていないにも関わらず自信満々で怒り、あおり、そして期限が急だったりするのでとても参る。
 まあ新人のときであればこの人一体何様なんだろうと怒りもしただろうが、最近は怒ってくるヤクザ的な人の上にもさらに高慢ちきなヤクザがおり、その上にはさらに極道も真っ青なヤクザが控えているらしいことが分かった。僕に指示が降りてくるまでにいろいろなヤクザがヤクザに脅されているという塩梅。更に突き詰めて行くと僕に与えられた理不尽は顔も知らない社長が発端で起こったとも考えられる。が実は違う。社長も不景気だとか他社との競合と圧力、はたまた政治的な理由により常日頃脅されている。さあこの調子でどんどんさかのぼって行くとどうなるか。最終的には人類的な規模で神に脅されてたりするのかね。神に脅されていると思うと何だか胸熱だね。
 ということで理不尽だろうがやるのが社会人。プロミスもっとサービス向上委員会みたいに和気あいあい仕事ができるときなんて新人研修ぐらいしかありませんよ。
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【日記】二日酔いについて

 最近気づいたのだが、日本酒を飲んで二日酔いになるとめちゃくちゃネガティブになる。死にたーいとか、会社行きたくなーいとかそういうことをめちゃくちゃ思うようになる。これがカクテルとかビールとかで二日酔いになると、別にそこまでネガティブにならない。なので前世、日本酒しかなかった時代、例えば戦国時代とかに生まれたら質の悪い日本酒でガンガンに二日酔いになった僕は、「もう私は生きていたくないでござる」とかいってブシューつって切腹して、なんで死んだのあいつ? とか言われてそうな。そんな二日酔いの朝。死にたーい。
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日記を書きたい

 日記をこれから少しでも書こうと決意したので書く。面白いに違いないから書く。もちろん僕は「文章を書きたい! 書かないとやっていられない!」的なスタンスを持っている訳ではないので書いている最中が面白いのではない。あとで見返すと衝撃的に面白いのである。というのも過去の日記の端々を見返すと、確かに僕だった人の人間性がありありと現れている。なんかこう、黒い人間性。居酒屋で「好きな作品は人間失格と罪と罰です、ええ」とか「あれは精神の結晶です」とか物知り顔で披露しては女子を引かせているような内向的な人間性が出ている。精神の結晶、とか(笑)。
 昔、星々の悲しみっていう小説で、それをどや顔で言ってたキャラがいたっけ。面白いのはそいつは学生ではなく、医学部を志す浪人生だった点。なんとなく分かるよね。高校卒業して大学に入りたてか入る前、現実逃避から小難しい海外の小説を読んではそういうこと言ってみたくなるんよね。キリって感じで。本を読んでる僕に向かって何を読んでるの? と可愛い女子が尋ねれば、「アンナカレーニナ」と気怠そうに答える態度。あこがれたわそういうの。で、やってたわ。やってたけど何もなかったわ。そう、何もないのがよい。そこから村上春樹的なラブストーリーが展開されないのがよい。アンナカレーニナを読んでいたって、何が起こるわけでもないんだよ人生。でもきっとこのインテリな僕にはそういった図書館の知的ハプニングから何かが始まるに違いない? っつって夢想する浅はかさ。それがいいよね。そういうおバカさはあの年代の特権か。そもそもアンナカレーニナは名前しか知らない。実を言うと作品名か作家名かすら分からない。しかしアンナカレーニナという言葉のインテリ力。これは使わない手はない。浅はか!
 そんなことを言いたいんじゃない。とにかく日記を読み返すと面白いのである。アンナカレーニナ(キリッ)とか図書館で言っちゃう奴の日記がつまらないわけがない。社会人になってから、自分の日記を読み返すととても面白い。会社があるのに徹夜して自分の日記を読破したこともある。アンネの日記でアンネが自分の膣の話を延々と書く日があるが、それに肩を並べるほど面白かったのである。自分の日記が、ですよ。もう自分の日記でこんなに楽しんでる自分が面白い。過去自分が書いた日記の文章を夢中になって読む26の俺。合わせ技一本! って感じでシュールなのである。
 断っておくと、決してコンテンツそのものが面白いわけじゃない。過去の自分から出るたまらなく黒い臭気が好きなのである。あ、こいつ暗そうだなーっていう感じ。いや、嘘ついたわ。すっげえ面白い。こいつと飲んだらきっと楽しいだろうなーって思う。いや、楽しくはなさそうだわ。楽しくなさそうってのが楽しいわ。あの頃は若い奴の中で一番面白い文章を書くと自負してた。さぞ自分は面白いでしょ? ってドヤ顔でブログとか書いてそうな学生たちを総じてバカにしてたわ。僕は君たちとは違うとか心の中でほくそ笑む過去の自分。高慢。暗い学生生活を送ったのでしょうね。
 というように未来から「あの頃は気持ち悪かった」と振り返る行為そのものが楽しい。アンネの日記なんかより自分の日記が一番楽しい。高慢な意味ではなくて、読み手が自分だからこそ面白い。また、こうやって偉そうな態度で日記を綴り、「過去の勢いのある頃の俺は面白かったなあ」と振り返るのが更に未来からの自分にとっちゃかなり面白いものとなろう。「昔はうちのじいちゃんは偉い軍人さんやったんやで」とかシミジミと語るおばあちゃんの横で、鼻くそほじりながら「ふーん」とテレビを見ている孫。ちょっとませた子供だったら、昔の話をたくさんし出したら老化の始まり、今を生きろよ今を、と偉そうに思ってるかもしれない。ちょっと気取った大学生だったら確実に思うね。まーた始まったってなもんよ。それを今僕がやっちゃってるのがね、楽しいよね。おーい未来の俺ー? 見てるー? 4年前ぐらいだったらこのブログも2000PV/日ぐらいあったんやでー? ほんと面白かったよねー昔の俺。「どっ」(ここで未来の俺、爆笑)。
 つーことで未来の自分に向けてっていう意味で日記を書きたい。決して夕方に森博嗣の日記「MLA」を読んだから「俺も日記書こっ!」と思った訳ではない。断じて違う。森博嗣の小うっとおしい文章の中に憧れを抱いちゃいないんです。ただし僕は熱しやすく冷めやすい人間なのできっと明日は書かないでしょう。どうせ明日書かないなら今日はもういいや。強いて日記的なことを書くとすればそうねえ。今日は半身浴をしながらMLAを読んだわ。森博嗣はあんなに偉そうに日記書いてるけど、あれも森博嗣自身がおじいちゃんになって見返したらさぞ面白いんだろうな。現代の森博嗣の日記を読んで、こいつと飲んだら楽しくなさそうだわい。とか思うんだろうか。思ってほしい。僕も森博嗣も同じ次元の人であって欲しい。分かるだろこの気持ち。
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ショッピング日記

 今日は朝起きて彼女と電話。彼女の九月唯一の休みということで、大通りのパルコで買い物をしようということになる。集合は僕の部屋。ひげ剃りをして部屋の掃除をしてぐだぐだと待っているとR君が部屋にやってきた。彼女が来るんだけどな……と若干嫌な顔をして追い出そうとしたが、タバコすおうぜと言われれば無下に追い出す訳にはいかない。R君と吸う煙草はうまい。タバコをすってまったりとしていると、彼女がやってきた。飯を食っていないということでまずはオムライスのうまい喫茶店でオムライスを食べようということに。なぜかR君も寂しいとか言ってついてきた。喫茶店。天井のところでなんかプロペラみたいのが回ってるオシャレな店内で、R君の与太話を聞く。R君は今日の夜女子と二人で飲みにいく予定だと言う。本当は僕も行く予定だったのだが、彼女が九月最後の休みと言うことで、彼女を優先させていただいた。「君の力が必要だよー。彼女も一緒でいいから来てよー」とオムライス食べ食べ恨み言を言っていたが、大丈夫。僕なんか役に立たない。僕がいたところでベジータ戦でヤムチャがいるかいないかぐらいの影響力しかない。君が悟空だ。っつってデザートのケーキを食べた後R君を置き去りにして彼女と二人、大通りはパルコへ。
 天気はよいが、大通りに出ると肌寒かった。たぶん気温は10度台に突入している感じ。東京の最高気温が31度だというのに相変わらずの札幌の魔都ぶりに恐ろしさを覚えながら歩く。パルコ到着。白基調のまぶしい店内を見渡すと、もうみなさんオシャレ。オシャレに必死。ハワイ帰りの芸能人の如くでっかいサングラスをつけた足の綺麗な女子やら、なんかこう自分のファッションセンスに自信を持ってるからこそ着れる、堂本剛が着てそうな奇抜なファッションの男子やら、みんなかっこいい。一方の僕はジーパンにTシャツ、サンダルというあまりにパルコに溶け込めないファッション。分かってる。俺だってこんな格好でパルコ歩くのって微妙だなって思う。ただ言わせてもらうと、パルコは僕の家から近い。お前らだって、家の近くのスーパー行くのにドレスなんて着ないでしょう? 僕だってその感覚なの。パルコが家から近すぎるが故に、わざわざ着飾る気力が起きない。コンビニ行くような感覚でパルコに行っちゃう。逆を言えば、パルコ=コンビニの感覚を持ってる僕こそ一番のチャラ男だと言えるのではあるまいか。え? 言えない? あら。そう。
 まずは彼女の化粧水を買いにオルビスへ。地下二階、化粧品売り場が近いせいかライトなキャバクラのような匂いがする。エスカレータをおりると、時計屋さんが目につく。何気なく彼女と時計を見ているとさすがパルコの時計というべきか。かっこいいのである。なんかこう、高校時代勉強しかやってきませんでしたっつー男子高校生が大学入学祝いにばあちゃんから買ってもらうような固い感じの時計ではなくて、流行を作ろうとする気概が感じられる時計がずらり。中でもテラテラの黒ベルトにピンクの文字盤を備えたNIXONの TIME TELLER Pがかなりかっこいい。黒にピンクて。カジュアルにも使えるしフォーマルな場でつけていても、さりげないワンポイント的に手首に栄えるじゃないですか。ちょうど社会人のくせに時計を持っていなかったので即買いである。いや、いい買い物したね。どうでもいいがこうしてさりげなく日記上にリンクを貼ったりカジュアルとかフォーマルとか言うだけでオシャレであるかのごとく振る舞える。NIXONって初めて聞いたわ。まあでもだいたいカジュアルかつフォーマルとか言っとけばなんとでもなる風潮があったりしない? 店員さんですら、二言目にはカジュアルだかとか言うじゃない? ああいうノリ激しく嫌いなんすけど、どうですかね皆さん。え? あ、そもそも? 別にオシャレに見えない? あら。そう。ならいいわ。
 彼女は彼女で以前なくした時計が売られていたらしく、テンションをあげていた。でも手持ちがない……と浮かない顔をしている。あまりお金を貸すのはあれなのだが、せっかくなくした時計に再び巡り会えたことだし、と思って僕の時計と一緒に代金を立て替えた。喜ぶ彼女を見て満足。ただなんつーか僕はコンビニ感覚のサンダル履きのショボクレ男なので、お金払うときに店員さんに「キャバ嬢との同伴で買わされてんのかな……ウケる」とか思われてそうでならなかった。いや、考え過ぎとか言いますけどね。ススキノが近いここのパルコは明らかに同伴的な人たちがたくさんいるのである。本当に漫画みたいに買わされてるのを目撃したことあるから。三回ぐらい。
 オルビスで化粧水も買って満足げな彼女を横にちょっとメンズの服でも見ていくかなーっつってメンズファッションのフロアに行く。なんだかチャラいニット地のジャケットが売っている。マネキンが着ているのだが、どうしてマネキンが着てる服ってあんなにかっこよく見えるんだろうね。店に入ってあーでもないこーでもないと服を選ぶより、マネキンの着てる服が一番欲しくなるのは俺だけ? もしくは店員さんが持ってくる服をそのまま買うのは俺だけ? そんなわけで、マネキン至上説を持っていた僕は、これかっこいい……と物欲しそうな顔でジャケットを見ていた。したら店員さん登場。試着もできますよーっつって、鏡の前に案内してくれた。もそもそとジャケットを羽織っている間、カジュアルやら秋だからとか袖口がチェックの云々っつってファッション情弱の俺をいたぶる。ひいい。その自信に満ちた顔が恐いの僕は。ジャケットを羽織って、鏡に映してみるとなるほど中々よろしい。ただ難を言うとサンダルがかっこわるい。うーん……と微妙な顔をしていると、何やらさらにマシンガンで用語をしゃべってくる。さあ、どうっすかねえなんて店員さんのほうを見ると、僕のほうなど一切見ずにずっと僕の横にいる彼女に説明してる。なんと。着るのは僕だというのに? 僕に説明してよお姉さん。ものも言えない幼稚園児に七五三の服を試着させてるわけじゃないんだよ。着る本人を無視しないでよ。いや、サンダルだけどさ。ファッションとか分からなさそうだけどさ。コンビニ感覚でパルコ来るけどさ。本人にこのジャケットの良さを伝えてよ。店員さんのあまりの僕への無視っぷりに萎えた僕は、「いやあ、やっぱサンダルがかっこわるいんで」とか訳の分からないことをもごもご話してジャケットを返す。店員さんはきっと「はあ?」という感じだったろうが、どうでもよい。オタクっぽい彼氏とチャラい彼女がカップルでショップに服を買いにきた場合、チャラい彼女をのせて買わせようとするやり方は気をつけたほうがよい。著しくオタクは傷つくのである。
 その後、パルコ内のビレッジバンガードへ。ビレッジバンガードはちゃらくてもオタクな彼氏に優しい気がするので落ち着く。「今日の猫村さん」の別シリーズ「カーサーの猫村さん」が売っていたのでこれまた即買い。ついでにJ-POPのミックスCDが売っていたのでそれも買う。いろんな有名曲が別の歌手によってアレンジされている。リライトとかロビンソンとかロマンスとかがカッコ良くアレンジされていて、たまらん。こういうアレンジ曲って本家の曲より良く聴こえるけど、本家の曲の良さ+名曲が別の顔を見せる興奮+思い出補正でよく聴こえるのよね。とくに思い出補正が高い。おもひでぽろぽろ。
 パルコを出るとすっかり薄暗い。小腹も空いてきたのでガッツリ飯を食べますかってんで、ホルモン中毒に行く。北海道って牛肉を出す焼き肉屋がかなり少ない気がする。道民は焼き肉=ジンギスカンなので、牛肉ってほとんど食べないのね。そんな中ホルモン中毒には牛肉がちゃんと用意されていたのでありがたい。カルビサガリとリブサガリを炭火の七輪で焼いてビールとキムチと白飯で流し込む。ぐへえ、うまい。死ぬ。ただ、僕らの席の横の窓が開いていたので風で煙が店内のあちこちにまき散らされる。七輪の上に換気扇があるはずなのだが、吸引力が弱く余裕でスルーして風下のお客さんたちをいぶす。あらまあ、申し訳ない。
 家に帰ると、女子と飲み会を終えてべろべろに酔っぱらっていたR君がベットで寝ていた。鍵が開いていたので入って寝ていたという。様子を見るに女子との飲みはおおむねうまくいったらしい。さびしかったーと言いながら僕の彼女をベットに引き寄せイチャイチャしていた。彼女とR君は僕がいないときにアマガミを一緒にやって徹夜するような仲だ。だからこうして彼女にイチャイチャするのもあまり気にならない。なんだかんだ三人で遊んでいるときが一番楽しいんよね。ベランダでタバコをすぱすぱ吸って部屋に戻ると、R君は僕の彼女の膝枕で熟睡していた。僕はR君の尻を思いっきりひっぱたくとパーンと言う音が部屋に響きベランダから逃げて拡散していった。
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