たばこが俺で、俺がたばこで

死んだ目でタバコを吸う人たち
 タバコが大嫌いである。巻き紙の燃える匂いはけむたくて、服にも不健康な臭気が付着してまるで悪臭の鎧を着ているかの様な心持ちがしてはなはだ不快である。
 何より、タバコを吸った後の自分の吐く息。アンモニア臭というか生ゴミというか。あの臭いのせいで俺は妻にキスする事すらためらう。愛する妻を存分に愛でられない苦しみ。タバコの鎧のせいで近づくのも嫌がられそうで怖い。夫婦関係は冷えきっていく。
 ではなぜ今俺はタバコを吸っているのか。俺がタバコだからだ。
 初めてタバコを吸ったのは中学のときだった。野球部の後輩に指折りの悪いのがいて、「Y平もどう?」と勧めてきたのだ。
 「てめー! その口の聞き方はなんだ!!」と怒鳴りたかった。後輩のくせにあだ名で呼んでくる無礼な態度に腹を立てた。でも相手は後輩とは言え不良。チキンな俺は、「ああ、それじゃあ一本くれるかな?」なんてスラムダンクで言えば木暮のような優しい笑みを浮かべながら一本もらった。
 マルボロだった。「吸いながら火をつけるんだよ」とこれまた先輩に向かってため口。完全になめられている。が、しかしこの一本を吸う事に意味がある。マジメでつまんねー先輩だと思ってたY平が、後輩の悪い誘いにも応じてくれる包容力のあるY平にステップアップ。一生ついて行きます! 的展開にならんとも限らん。なので吸った。
 灰の味がした。「げほっげほっげほ!!」と激しく咳き込む。なんだこれは。嗜好品っていうレベルじゃねーぞ。ひとしきり胸をたたきながらゲホゲホやっていると、後輩がにやけがおで言った。「まだ早かったっすかね?」
 ぶん殴りたかった。あと背が20センチ高くて、筋肉ムキムキだったとしたら。
 二度目の挑戦は大学生の頃だった。その頃僕はコンビニのバイトリーダー(笑)をやっていた。一緒にバイトに入った女子高生と休憩室で雑談をしていたときだ。女はおもむろにクールブーストを取り出すと、プカプカやり始めた。女子高生が馴れた手つきでタバコを吸い始めたのには内心ぎょっとした。場末のスナックで足を組みながらスパーッとやるママのように女は煙を吐き出した。
 思い返してみればその様はタバコを楽しむといったよりは、タバコを吸っている自分を楽しんでいるようだった。かっこつけだ。女子高生は俺に挑発めいた目を向けている。「何? 未成年がタバコ吸ったぐらいで騒ぐの?」と言った風情。こいつはかつてのガチヤンキー後輩とは違う。比較的善良でか弱い女子高生、でもちょっとレールから外れてみたい。いわばニワカである。ふかしタバコでもあった。ちょろい。かのようなものに何も言えないのであればそれは俺の敗北である。
 「一本ちょうだい」
 精神的敗北感を覚えながら、俺はクールブーストに火をつけた。肺まで一気に煙を吸い込む。目の前がやや黄色黒くなる。ヤニクラだ。しかし咳き込まなかった。それにメンソールだからか灰っぽくないのもよかった。俺は上機嫌で女子高生とタバコを吸いながら、「今日のピザまん余るといいねえ。持ち帰るから」だなんて他愛のない話をしていた。
 それから自分で買ってタバコを吸い始めた。本数は1日3本と決まっていた。何かの小説の中で主人公がそう決めていたからだ。いかにもファッション的でいい。友達と喋ってるときに、「あ、おれちょっとタバコ」といって席を立つのも誇らしかった。そう、あの時の俺はまだタバコではなかった。
 社会人になって数年経った。社会人とは不思議なもので、タバコを吸いに席を立っても特に文句は言われなかった。それどころか先輩など「休憩する」とか言って堂々とタバコを吸いに行った。タバコなら休憩してもいいんだと思った。
 そして今。俺は何をするにもタバコが手放せなくなった。メール1本打ったらタバコ、10行コーディングしたらタバコ、電話をとったらタバコ、皿洗いをしたらタバコ、金魚にエサをやったらタバコ、風呂掃除をしたらタバコ、起きたらタバコ、寝る前にタバコ、寝付きがよくないとタバコ、タバコタバコタバコ。
 そうして俺はタバコになった。もはや俺の本体はタバコである。タバコが俺を生かそうとしてくる。もしあなたが俺が吸ってるタバコをとりあげて踏みつぶしたとしたら俺は一時的に死ぬだろう。しかし我が家に戻ればカートンの山。俺が死のうと第二、第三のタバコ(俺)があなたを不快な煙地獄にひきずりこむ。その中心、もやもやとタバコのもやで包まれた中心で。ホームレスみたいなタバコ臭を放ちながら俺は叫ぶ。タバコを口にくわえながら叫んでいる。「俺(タバコ)を殺してくれ!」

意外に手がかかる!?ウサギの1日の世話に密着

こんにちは
 こんにちは、茶太郎です。今回は僕の下僕こと人間が、どのように僕の世話をしているか紹介する。
 ちなみに僕のスペックは下記。
種類:ホーランドロップイヤー
性別:♂
年齢:5ヶ月弱
 ホーランドロップなのに耳が立ち気味なのは仕様だ。
僕の一軒家1
 これが我がマイホーム。
僕の一軒家2
 トイレ、給水器、ペレット入れ、牧草BOX、休息マットの1Rだ。狭くて可哀想とか殺風景だとか一見さんは抜かすが、大きなお世話。僕たちウサギ族は自分の匂いがついた安心できる場所ならどこだってよい。

朝、起きたらトイレを掃除しろ

トイレを変えろ
 朝起きたら何をするか。歯磨き? 顔を洗う? 違う。お前ら(下僕)のことは後回し。まずは僕のトイレ砂を変えろ。夜のうちにボッコボコにウンコしてっから。尿石バリバリついてっから。
 くっせえトイレ砂を捨てたら、トイレをティッシュで拭いて綺麗にしろ。2週間に一回は水洗いをすること。さぼったら足ダンするぞ。2回するぞ。

すみやかに牧草を足せ

牧草はひとつかみ
 トイレを綺麗にしたらお次は牧草を足せ。牧草は1歳未満ならひとつかみでいい。
牧草with乾燥剤
 保存にも気を使え。乾燥剤を入れてしけらないようにしておけ。これサボるとすぐ分かるんだから。しけってんなってすぐ分かるんだから。しけってたらどうするって? 足ダンだよ。

ペレットとエンハンサー、乳酸菌を忘れるな

ペレット
 ペレットは僕の主食だ。だいたい器の6割ぐらいのラインでもりっと盛る事。
エンハンサー
 さらにペレットの上からエンハンサーをかける。エンハンサーは僕にとってのオカズの様なもの。お前らだって朝飯に白飯だけ出てきたらイヤだろう? すき屋行って白飯だけ食べるヤツがいるか? オカズ付きの朝定食食べるでしょ? だからエンハンサー。ね。お願いね。
エンハンサーはティースプーン1ぱい
 ティースプーン1杯ぐらいが目安。ほんと言うともっと欲しいけどほら、僕、健康に気を使ってるから。ピザばっかり食ってるアメリカのデブみたいになりたくないから。
乳酸菌
 最後に乳酸菌だ。
5つぶ
 だいたいこのぐらいでいい。5本ぐらい。僕の完璧なブレックファーストは以上だ。
 全部そろってようやく僕の一日が始まる。ちなみに毎日必ず同じ時刻にこれ、用意しないと僕怒るから。僕で言えば7時。平日だろうと休日だろうと7時だから。関係ないから。君たちの都合とか関係ないから。君たちの親が死のうと7時に食べるから。覚えておいて。

夜、仕事から帰ってきても気を抜くな

 夜、陰気な顔をして君たちが仕事から帰ってくる。まずは料理でも〜って? 違う。君たちがやらなければならないのは朝と同じくトイレ掃除、ペレット、エンハンサー、乳酸菌のコンボだ。後回しにして料理とかやり出したら僕、許さないから。お前らの飯<僕の世話だから。ウサギを飼うってそういうことだから。
給水器
 ついでに水も替えておいて。給水器は水で軽くゆすいで、水気をよく拭き取っておくように。僕、水びったびたの給水器とかヤダから。ウサギは水に弱いから。分かるでしょう? ねえ。

ペットシーツも替えろ

ペットシーツを変えろ
 ケージの下のトレイのペットシーツも替えとくれよ。ウンコいっぱい落ちてるからさ。まあペットシーツじゃなくてウチの場合は新聞紙だけどね。僕、高貴なウサギなんでオシッコとかこぼさないからこれでいいんですわ。まあなかにはこぼしちゃうウサ公もいるみたいだけど、僕、そういうレベルじゃないんで。ペットシーツとか家計にもアレなんで。いいウサギでしょう? 僕。

グルーミングは嫌だけど念入りにやれ

 21時。グルーミングの時間。イヤだけどこれは甘んじて受け入れなきゃならない。僕、毛繕いするときに毛飲み込むんで。ウサギって吐けないから胃腸で毛が詰まって毛球症ってのになるらしい。
膝だっこ
 だからしゃーなしで膝だっこ。まずは頭の頂点から体の毛並みに沿って。
仰向けだっこ
 仰向けだっこもさせてやる。腹や胸の毛もとらないといけないからね。
 しかし屈辱。この体勢完璧に服従のポーズじゃないですか。野生だったら100%捕食される体勢じゃないですか。でも、させてやる。毛球症で死ぬのはイヤだ。しのごの言ってる場合じゃない。ここは我慢する。このグルーミングが長命の秘訣。敗北ではない戦略的撤退だ。念入りにやるがいい。
これだけとれました
 撮れ高良し。しかしこれが僕の胃袋にはいるところだったと思うとぞっとする。

へやんぽは安全な場所にしろ

へやんぽ開始
 グルーミングが終わったらへやんぽ。スペースをサークルで囲って準備しろ。コードとか、布とか、僕がかじりそうなものは全部とっぱらうのを忘れるな。かじるなって言われても無理な話。かじるのは僕の趣味みたいなもんだ。お前らがこうるさい音楽とかいうのを聴いて心を落ち着かせるのと等しい。No かじり No Life。

撫でろ。そして愛でろ

愛でろ、そして撫でろ
 へやんぽ中はいちいち構ったりしなくていい。構って欲しかったら自分で行くから。こっちのタイミングなんで。あなたたちのタイミングじゃないんで。

寝る前にアクティブEを食わせろ

 さあ23時だ。寝る時間だ。では歯を磨いて、お休み。ああん? ダン! お前ら一番大事なこと忘れてる。
アクティブE
 アクティブEだ。毛球症予防の薬。これを飲むと、飲み込んだ毛をとかしてくれるらしい。
アクティブEは2粒
 就寝前に2粒。「毛球症は命に関わるから、生後4ヶ月過ぎたら必ずあげなきゃ駄目よ! 絶対よ!」とブリーダーさんが強調してた。ちなみにうちの下僕どもは時々アクティブEを忘れて寝る事がある。けしからん。
 いかがだったろうか。こうして振り返ってみると、うちの下僕どもは時々手を抜くものの、なかなかやってくれてると思う。まあ僕らウサギ属は人間に媚びたりしないんで、いくら世話してくれるっつってもすぐには「大好き!」とはならないですがね。まあでもよくやってくれてるんで時々、
なでさせてやってる
 こうして撫でさせてやるようにしてます。はい。飼い主をしつけるのも大変ですな。まったく。

5月14日 ギバちゃんに復職の書類を書いてもらう

 昨夜は深夜1時に就寝。起きたのが9時。気分はやや悪い。今日は通院の日だからであろう。最近分かってきたが、何かイベントごとがあるとめんどくさくなるらしい。これは病気ではなく性質なのかもしれない。
 10時。重い腰を上げて長野病院へ。この病院、予約とかないのでひたすら待ち時間が長い。ヨッピーさんの記事などを見て時間をつぶす。
 診察は受付してから30分後。おなじみのギバちゃん似の主治医とご対面。相変わらずわきががすごい。でもかっこいい。渋いんだよね。世間話をしながら、会社からもらった復職個人診断書を渡す。主治医の見解を書いてもらう。ギバちゃん、少しめんどくさそう。その場でばばーっと書くと診断書と言う形で渡してきた。これを産業伊に渡して面談したら祝、復職である。祝、なのかね? もうちょい長い春休みを満喫したい気もしている。
 帰ったらセイコーマートのお弁当などを食べつつ落語を聴く。立川談志の「子ほめ」。シャドーイングを試みるがやはりうまくいかない。奴ら僕の2倍くらいのスピードで喋るものだからやはり芸人は凄い。ただ、シャドーイングをやるたびに確実にうまくなっているのでやればやるほど追いついている感じはする。
 落語シナリオを書こうと思ったが疲れが出たのかそのまま6時まで昼寝。今日は気力がわかなかった。こんなんで復職できるだろうか。産業医面談は上司と電話したところ明日ということになった。急だ。仕様変更も急なれば、復職手続きも急なのがウチの会社の性。怖い怖い。

5月13日 ジャッキー万歳

 昨夜は0時に就寝。起きたのが6時半。珍しく早起きできた。歯磨きなんかもしちゃったり。コーヒーも入れた。美味い。
 9時前にはスウェットに着替えジムへ。昨週の野球練習がいまだに響いており背中が痛い。ので今日は少し軽め。下半身を重点に。ランニング30分。フットプレス/エクステンション/カールを3セット。アームカールを限界の重さで3セット。腹筋マシン2セット。バテた。いつもはこれにくわえて上半身のトレーニングをするところだが野球シーズン中は無理である。野球練習して3日経つのにまだ体が痛む。ピッチングなんてやっちゃったもんだから。25過ぎてから体がよく動かん。いや、動くは動くが翌日からのダメージが半端ない。それを考えると山本昌(49)は怪物だ。
 昼はチャーハンを作り、レンタルしてた「香港国際警察」を見る。ジャッキー映画。ジャッキーもこのころは大した年齢になってたはずだけど、まだ走行中のバスの上に乗ってた。怪物がここにも。いや、スタントもさることながらストーリーもけっこうよかった。ジャッキー扮するチャン刑事が抱える闇とそれを解決していく様の演出には思わず唸らされた。
 まあジャッキーはよかったんだけど、これ観てる最中に変な虫に腕を噛まれた。黒いてんとう虫がでっかくなったみたいなやつ。畜生、窓開けてたから。しかし虫も何も僕に嫌がらせをしようとして噛んだのではあるまい。噛むなら噛む理由があったはず。グレゴール・ザムザかもしれぬ。
 叩きつぶしては可哀想と思いティッシュにくるんで窓の外のコンクリートの上に放ってやった。放った先を見ると何もない。飛んで逃げたか、はたまた毒虫は僕の幻覚だったか。ニョキニョキと僕の心からはい出してくる毒虫。とってもとっても消え失せる。すっと忘れた頃に現れる毒虫。怖い怖い。心なしか噛まれた腕がやや腫れてきた。ひどくならねばよいが。腕も痛いが背中も痛い。筋肉痛。毒虫どうでもいい。まずはこの筋肉痛をなんとかせねば。何? それをとる法はないってぇ? どうしてだい? 言ってやろうかいこのベランメーめ。歳のせいだよ。